米国中間選挙まで3か月!医者や科学者が選挙に出るってマジなの?
- 2018/08/18
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’18年11月6日、米国ではトランプ政権初の中間選挙が行われる。
大統領任期の真っただ中に行われる中間選挙は、大統領の信任投票と呼ばれている。
再選率8割と言われている上院、下院議員といえども、そろそろ引退した方がいいんじゃないかという年齢、経歴、政財界への影響力の少なさの議員も目立つ中、今回の中間選挙は荒れそうだ。
その証拠に、間違っても政界に立候補しなさそうな科学者や医師たちが議員に立候補しはじめた。
大根役者や不動産王では政治家は務まらない
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の中で、マイケル=J=フォックス演じる主人公が、親の世代までタイムスリップし、お前の時代の大統領は誰だと聞かれて『ロナルド・レーガン』と答えると、JFK時代の当時の人々が、『あの大根役者か!』と、大笑いするシーンがある。
今は大根役者どころか、リアリティショーの常連にして、不動産王が大統領なのだから、レーガンどころではない。
今までの政治家も嫌だが、リアリティショーの延長上の大統領とその僕も嫌だという人たちが、立候補しようとしているのが米国の現状だ。
背景にあるのは、共和党穏健派や保守派が『自分たちに被害さえなければ鼻をつまんででもトランプに票を入れる』という態度が我慢ならなくなった事。
そしてもう一つは、研究予算の大幅削減だ。
いかにも商売人という考えで、合理的なコストカッターとなった大統領の政策に反発を示す国民は多いが、具体的な行動に出た素人が科学者や医者たちという事になる。
トランプ政権が続くと欧州各国の様に、頭脳流出の危機が訪れ、米国最強神話が崩れると医師や科学者は、危機感にさいなまれているのだ。
米連邦議会の上下535名のうち、理系出身者は僅か3名。
医師やエンジニア出身は、30人しかいない。
科学者を議会に送り込むことが出来れば、もっと理知的かつ、客観的なものになるのではないか。
それは科学者たちがだした答えだったのだ。
では具体的に米国の科学者、医者たちは、議会に人を送り込むために、どの様な活動を行っているのか。
厳しい戦いを強いられそうになる科学者たち
米国には科学者や医師、エンジニアを議会に送ろうという団体『VOTE for STEM』というものがある。
今回は、中間選挙に150人が立候補を表明。
中間選挙時には、435の下院、33の上院の他に、各州の知事選挙も行われるので、トランプの牙城を崩すには、絶好の機会だと思ったのだろう。
立候補した顔ぶれは、オバマ政権時代の技術担当者や、糖尿病専門内科医、ガン研究者など幅広いが、実際は、党公認前の予備選で大半が敗れ、残ったのは半数以下となっている。
その上、対抗馬となる共和党候補がかなり強い相手となると、勝ち目はない。
理系候補者の支援や、選挙セミナーを行う団体『314Action』は、今回の中間選挙の行方を、知事、上院、下院も含め3~5人当選すれば恩の字という想定をしている。
こんな厳しい戦い、本気で挑む科学者がいるのだろうか。
探してみたら、実例が出てきた、しかも対抗馬を見るとかなり厳しい戦いを強いられそうな相手である。
地方大学の予算削減を食い止める為に戦う男
ミシシッピ大でガン研究を専門にし、生化学を教える教授、ランディ・ワドキンスさん(53)は、トランプ政権の大学の研究予算削減を聞き、下院議員に立候補し、予備選を勝ち抜き、党公認を得た。
『私は家族の中で初めて大学に行き、博士号を取ったんだ。トランプ政権が打ち出した研究予算削減が現実化すれば私の様な研究者はリストラされてしまう。
ハーバードやMIT、スタンフォードの様に、どの国の人間でも知っている大学なら予算の削減はないさ。
でも私が卒業した地方の大学は?どの国もこの様な問題は抱えているはずだ。
トランプの考えが世界中にひろがらない為にも、僕は立候補して戦うことを決めたんだ。』
ワドキンスさんは、トランプのリストラ政策が現実化するまでは、聖ジュード病院の教授だった。
予算削減で病院から大学に逆戻りになってしまったという。
彼の対抗馬は、共和党の軍事担当官でクシュナーのお付きと言われるトレント・ケリー下院議員だ。
ミシシッピ第一区のユダヤ系の票はケリーに行くことは間違いない。
ワドキンスさんの立候補を支えるのが、20年前のオバマさんの様に、リーダーシップに溢れた若き民主党のリーダーであれば、ワドキンスさんにも票が入るだろうと思うのだが、今の民主党はいかんせん、リーダーシップにかける議員がトップクラスに来ている。
共和党のライアン議員の引退を笑えないほど、民主党のリーダー格もまた高齢化しているのだ。
科学者という異端児が立候補するのは、議会に新風を巻き起こすという点ではいい事かもしれない。
ただ問題は、彼らが立候補する民主党本体に魅力があるかどうか、という事なのだろうと思う。