採用にはAIを使います、と言われたら転職者が気をつけるべきこと3つ
- 2018/10/24
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人材採用にもAIを用いる時代が到来し
米Amazonが過去数年間かけて構築してきた「AIを使った人材採用システム」がこのほど取りやめとなった。
いまや人材採用にAIを使うことはそれほど驚く時代ではなくなったし、進んでいる分野では人材を探す段階からAIの力を借りた、いわゆる「AIスカウト」なるものまで横行しているという。
だからAmazonのような大企業が採用AIに注力していたとしてもなんらおかしくないわけだが、それをいきなり「あー、やめやめ!」とばかり途中で投げ出してしまったのはいったいなぜなのか。
ネット業界で成り上がった小売りの巨人・Amazonらしくもない振る舞いに全世界が注目したのだが、どうも話を聞くと「え?そんなことで止めたの?」というような不可思議なワケがあったらしいのだ。
システムとしてはごく単純かつ簡単な作業で引っ掛かった
そもそもAmazonのAI採用システムは、応募者の履歴書をきちんと審査するところから始まっているらしい。
初手はどの企業もそうだろうなと思う人もいれば、履歴書から見るってAmazonけっこうアナログだな、と思う人もいるだろうが、とにかく一応は採用の王道路線を歩んだわけだ。
こうしてAIには過去10年分の採用者履歴書をパターン学習させ、新たに応募した候補を5点満点で採点するというシステムにした。
ところが、この採点が始まってすぐ社内で「これってなんかおかしいんじゃね?」という声が聞こえてきた。
それはなんとAIが「明らかに男性をひいきする結果を出している」ことがわかったから。
それもそのはず、過去10年技術職に応募していた人のほとんどが男性であり、パターンとして男性の履歴書しか見せられていないAIは「なら、オトコばかり採ればいいんじゃね?」と勘違いしたようなのだ。チャンチャン♪
AIの愚直さを褒めるべきなのか、そんなAIに頼りすぎのAmazonをたしなめるべきなのか、とにかくとんでもなくくだらない理由で肝いりプロジェクトはおじゃんになったというわけ。
オトコをひいきする、の意味もまたちょっとヘン
その後詳しくこのシステムについて検証した人の話によると、
▼採用AIは履歴書中の「女性」というワードも地雷扱いで過敏に反応していたらしい
というのだ。
たとえば応募者はれっきとした男性でも、経歴に「女性○○部の部長」「○○女子大学」というワードがあっただけで、評価ががた落ちになるケースが見られたという。
こんなことならテキストメモの「マーカー機能」でも事足りるわけで、なにも書類の読み取りまでAIに頼る必要はない。
Amazonも当初はこれらを特殊な例だとして少しずつプログラムに修正を加えながら使っていたらしい。
しかしながら、テキストメモとAIとの大きな違いは
▼学習済みの採用AIが何を考えているか人間にはわからない
▼結果としてAIが他にもひいき要因を持っていないとは100%言い切れない
というジレンマを抱えること。
そこら辺は学習の結果妙に愛国心が高まっちゃったAIとか、ナチスを肯定するようになったAIとかの例もあって、Amazonとしてもプロジェクトの将来を悲観するようになったのだろう。
幸いこのAI履歴書チェックはAmazonで本採用される理由にはならなかったというから、まだ傷口が浅いうちに撤退したというのが事の核心のようだ。
採用AIシステムの光と影
さて今回のAmazonのすったもんだAI採用から得られる知見として、私たちが転職の当事者となった場合、
▼AIはあなたの履歴書を隅から隅まで気に入って書類選考を通過させたわけではない
▼(今度の件のように)もしかしたら面接に集まったオヤジたちは何かしらある種の「偏り」を抱いた人の集まりかもしれない
▼そして企業はまだAIによる選考を絶対視していない
これら3つのことには十分注意しておかなければならない。
とくに最後の「企業のAI信仰の深さ度合い」という項目は、なぜその社がAI採用を用いるのか…時間がないからか、人事課で下す結論には限界があるからか、入社後のミスマッチを防ぐからか…その目的によってAIを活かすことにも殺すことにもなる。
人事のオッサンによく思われる前に、AIに気に入られなけりゃならないとは、いやはや転職も不自由な時代になりましたな!