オヤジが通勤途中に痴漢で逮捕!?痴漢冤罪避けるための対策
- 2019/12/01
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通勤途中で気を付けなければならないと犯罪として「痴漢」があります。
ただ、「痴漢」といっても、明確な定義はありませんし、その具体的内容をご存じの方は少ないと思われます。
そこで、この記事では「痴漢」がどんな行為か説明した上で、通勤途中の痴漢冤罪を避けるための方法についてご紹介してまいります。
1.痴漢とはどんな行為?
痴漢といえば、各都道府県自治体が設けている「迷惑行為防止条例(名称は各都道府県で異なる)」、あるいは刑法の強制わいせつ罪(刑法176条)で処罰されるおそれがあります。各規定はどのように規定されているのでしょうか?
(1)条例では?
たとえば、東京迷惑行為防止条例5条1項1号では次のように規定されています。
5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、次に掲げるものをしてはならない。
1号 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又
は直接に身体に触れること
これからすると、
・【場所】公共の場所又は公共の乗物
・【対象】人の身体
・【行為】衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に触れること(ただし、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為のもの)
が「痴漢」ということになります。
「公共の乗物」にはもちろん電車も含まれますから、電車内で上記の行為をすれば条例違反に問われる、というわけです。
(2)強制わいせつ罪では?
強制わいせつ罪は、刑法176条に規定されています。
刑法176条
13歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした場合も同様とする。
これからすると、
・【場所】問わない
・【対象】人
・【行為】13歳以上の人に対しては「暴行又は脅迫+わいせつな行為」、13歳未満の
人に対しては「わいせつな行為」のみ(暴行又は脅迫は不要)。
が「痴漢」ということになります。
「わいせつな行為」としては、キスをする、胸、股間、陰部を触る・揉むなどの行為が典型でしょう。また、被害者の背後から突然胸を揉むなどのように「暴行=わいせつな行為」と認められる場合でも強制わいせつ罪に問われるおそれがあります。
(3)電車内での条例の痴漢と強制わいせつ罪の痴漢の境界
強制わいせつ罪の痴漢は場所を問いません。
そして、条例の【行為】がそのまま強制わいせつ罪の「わいせつな行為」とみて取れる痴漢も少なくなりません。
そこで、たとえば電車内で痴漢をした場合、条例が適用されるのか強制わいせつ罪が適用されるのか問題となる ことがあります。下記でご説明しますが、両者は罰則に大きな開きがありますから大切な問題です。
この点、両者を区別する明確な境界線(基準)があるわけではありません。
しかし、条例の痴漢よりも強制わいせつ罪の痴漢の罰則の方が重たいことから、より悪質で違法性の高い痴漢は強制わいせつ罪を適用される可能性があります(そもそも強制わいせつ罪は暴行・脅迫を手段とする罪です)。
たとえば、同じ陰部を対象とした行為でも、下着の上から触る行為には条例が適用される可能性がありますが、下着の中に手を入れ直接陰部を触る行為(暴行=わいせつな行為)には強制わいせつ罪が適用される可能性があります。
2.痴漢の罰則、量刑は?
「痴漢」についてご説明したところで、今度は条例と強制わいせつ罪の罰則と量刑をご紹介します。
(1)罰則
東京都迷惑行為防止条例は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされていま
す。また、常習性が認められる場合は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。他方、強制わいせつ罪は「6月以上10年以下の懲役」と罰金刑がありません。
(2)量刑
実際に科される刑の重さは、様々な事情(情状)を考慮し、最終的には裁判官が決めます。この作業を量刑といいます。
ここで、前科、前歴がない、まじめな?オヤジのサラリーマンが通勤電車内で痴漢をした場合を想定しましょう。
まず、条例の痴漢の場合、量刑は「罰金刑が選択され、金額は20万円から30万円」が相場でしょう。ただし、あくまでも相場であり、個別具体的事情によって金額は増減します。
次に、強制わいせつ罪の痴漢の場合、量刑は「懲役1年6月から懲役2年」が相場でしょう。想定しているオヤジさんは前科・前歴を有していませんから、執行猶予が付くことが多いかと思われます。しかし、条例と同様、個別具体的事情によって量刑は変動します。前科・前歴がなくても場合によっては実刑となる可能性も十分あります。
3.痴漢は冤罪の可能性が高い犯罪
痴漢は冤罪の可能性が高い犯罪と言われています。
その理由としては、被害者の話(供述・証言)以外の証拠が少ないことが挙げられます。
ところが、思い込み、先入観、他者からの働きかけ、時の経過などによって人の話というのはときに真実を曲げることもあります。
にもかかわらず、痴漢事件では、そうした人の話を軸に痴漢が立証されていくわけですから、真実が曲げられる、つまり冤罪の可能性が高い、というわけです。
特に、満員電車の中で、被害者が犯人の顔すら確認できない状況では、被害者は通常、身体を触られた箇所の方向にいる人、あるいは手などが引っ込まれた方向にいる人を犯人だと決めつける傾向があります。
過去の裁判では、被害者の話が不自然・不合理だとして無罪となった裁判例は多くあります。
4.痴漢冤罪を避ける事前、事後の対策
このように、痴漢は冤罪の危険が高い犯罪です。
そこで、こうした目に遭わないために事前にどんな対策がとれるでしょうか?また、仮に、犯人と疑われた場合にはどう対処すればよいでしょうか?
(1)事前の対策
事前の対策としては、通勤方法を再検討すること、が挙げられます。
電車、バスなどで通勤されている方は、運動やダイエットも兼ねて(スポーツ)自転車や徒歩などに代えてみてはいかがでしょうか?
「痴漢のために、わざわざ通勤手段を変えたくない」という方については、満員状態となる朝のラッシュ時間帯を避ける、場合によってはそのために勤務時間を変えるなどといった工夫も必要かもしれません。
いざ、電車、バスなどの公共の交通機関を利用する際は、なるべく女性の後ろに立たない、電車の席に座る、つり革につかまるなどの工夫が必要となります。
(2)事後の対策
① やってないことはやってないと明確に主張し、一貫した態度を貫く
「やってないことはやってない」と明確に主張しましょう。
ここで痴漢をやってもないのにやったと認めてしまうと、後でその話を覆すには大変な時間と労力を要します。最初から最後まで一貫した話、供述を貫くことが大切です。
② 自分から警察にDNA型検査、微物検査を依頼する
DNA型検査は被害者の衣服から細胞編を、微物検査は犯人の手に被害者の衣服の繊維を採取し、犯人が被害者に触れたこと証明するために用いるもの。
自らこれらの検査を依頼するということは、自ら身の潔白を証明していることに他なりません。
③ 家族、弁護士に電話する
痴漢が発覚した場合、通常、被害者・目撃者に駅員を呼ばれる→駅員に事務室まで来るよう促される→事務室に警察官が駆け付ける、という流れが一般的かと思います。
しかし、警察官が来るまでの間、あなたはどこで、何をしようが自由です。事務室に行く義務はありません。家族、弁護士に電話することもできます。
家族と連絡が付いた場合は、身柄引受人として警察署に来て欲しいこと、痴漢に強い弁護士を探して接見に来て欲しいこと、この2点を伝えましょう。
5.おわりに
以上、痴漢や痴漢冤罪を避けるための方法をご紹介してまいりました。
誰しも、いつ、どんな形で痴漢冤罪に巻き込まれるか分かりません。
特に、通勤で公共の交通機関を使うことの多いサラリーマンの方はなおさらでしょう。
痴漢冤罪を他人ごとではなく自分のこととして、ご自身でできる対策について真剣に考えてみてください。