ドン・ファンって本当はどんな人だったの?
- 2018/06/13
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時代ごとに必ず存在した「好色王」たち
その破天荒な女性遍歴から「○○のドン・ファン」と呼ばれた人物の不審死が、日本で話題になっています。
自称数千人の女性とお付き合いし、彼女らに数十億円を貢いだという今回の日本版ドン・ファン氏。
彼ほどでなくても、日本には時代を映し出すそれぞれの「好色王」がそれぞれの時代に似たような異名を獲得していたものです。
また呼び方は違っても、同じような武勇伝を持つ実業家、政治家から犯罪者まで、この手のオモシロ人物には事欠かないのが古き日本という国でした。
ですが、そもそもみなさんは、元々のドン・ファンっていう人物をご存じですか?
本当にそんな突拍子もない男がこの世に存在したのでしょうか。
別名ならもっと知られている男?
ドン・ファンという呼び名は、正式な名前ではありません。
スペイン語の「Don Juan」が元となっているようですが、それにしても「ドン・フアン」と読む方がより自然なようです。
残念ながら彼は「伝説上の人物」です。
17世紀頃にスペインで浮名を流した「ドン・フアン・テノーリオ」という人物を指し、フランス語では「ドン・ジュアン」、そしてイタリア語だと「ドン・ジョヴァンニ」と呼ばれます。
ドン・ジョヴァンニ…そうです、あの天才・モーツァルトが作曲したオペラ「ドン・ジョヴァンニ(1787)」の主人公のモチーフとなっている人物です。
ドン・ジョヴァンニを題材とする最も古い原作本は、伝説当時の1630年頃にはすでに書かれていたようですが、オペラの正式な台本はもっと後の時代のものを参考にしたようです。
オペラと日本のドン・ジョヴァンニを比べてみると…
オペラは歌劇ですから、演出もあれば誇張もあります。
どの程度古い伝説を継承したのかは定かではありませんが、それを踏まえても、オペラ内のドン・ジョヴァンニはまさにやりたい放題やっている感じがありありです。
主人公ドン・ジョヴァンニは、欧州各地で2千人以上、スペインだけでも千人以上の女性と手当たり次第関係を持ち、それでいて剣の腕も達者。バッサバッサとジャマする男どもを切り捨てます。
比較はできませんが、こちらも「乱世の姦雄(かんゆう)」と呼ばれた三國志・魏の曹操(そうそう)を彷彿とさせます。
しかし日本のドン・ジョヴァンニさんは、確かに人数的には本家以上の女性と関係は持っていますが、邪魔立てする男どもを切って捨てたわけでもなく、また別れ話がもつれて女性に手を上げるというよりは、どちらかといえば女性の方から金目の物ごと消えるように逃げられた、という性格の御仁で…。
まあご本人の意志はともかく、出版された書籍のタイトルが一人歩きしている感は否めません。
またオペラのクライマックスでは、ドン・ジョヴァンニが壮絶な最期を遂げるのですが、ある意味豪放らい落なまま地獄に落ちた彼に比べ、日本版はなにやら寂しげな雰囲気さえ漂い、いかにもご老人の終末模様といった風情です。
それでも不思議と悲壮感はあまりない?
ただ唯一幸いなのが、日本版ドン・ジョヴァンニさんは、オペラとは違いまったく悪人ではないこと、十分にお歳を召していらっしゃったこと、ではないでしょうか。
「ホラ見たことか、オッサンが若い女にうつつを抜かすからだ」という声も理解できます。
けれどご本人が悪人だったから「罪滅ぼしだ」というのではなく、女好きで不思議なお人好しオジサンが遂げた不思議な最期だからみな食いつくわけで。
普通のオジサンができないことを一代で成し遂げてきた、その意味では驚嘆に値する人物です。
ハッキリ言えば同じ男としてうらやましい一面もあります。
しかも破天荒な人生を歩みながら、わずか2、3年前までは世に知られていなかった(理想)謎の人物であり続けたのですから。
日本版ドン・ファン物語はこうして閉幕となりましたが、こういう人物の存在は、現代では案外これが最後ってことも十分考えられます。
まるで絶滅したニホンオオカミのように、ね。