食品ロスをなくす、セカンド・ハーベスト・ジャパンって何?
- 2018/11/27
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日本国内で食べられるのに廃棄される食糧は年間646万トン(農林水産省・環境庁調べ・’15年度)と言われている。
その内訳は、適度に作るよりも余剰分を作った方が儲かるからという企業側の都合もあれば、
完璧なものでないと欲しくないという日本人の食品に求める完璧さも見え隠れする。
そんな中、出来うる限り食品ロスをなくし、食べる事にも困る人々に食事を無償で提供するNGOがある。
それが東京・浅草橋に本部を置くセカンド・ハーベスト・ジャパン(以下・2HJ)だ。
2HJが運営する『フードバンク』が目指す、食品の循環とはどのようなものだろうか。
徹底した食材流通管理と配布先管理で成り立つNGO
『フードバンク』は、企業から余った食品を集め、食べ物を必要としている人に配る活動をしている。
今では、食材を提供してくれる食品メーカーや卸の数は、1500社にのぼると言われている。
提供団体も含めると’17年現在で全国で、
関東21、中部13、東北12、近畿7、中国9、四国6、九州11、沖縄1、北海道5団体と、全国で85団体になる。
個人からも食品提供を募っているが、条件があり、
未開封、常温保存可能、賞味期限が一か月以上あるものが条件。
お米、乾麺、缶詰、瓶詰、レトルト食品、インスタント食品、調味料、のり、ふりかけ、乳児用食品などが寄せられる。
特に、お米はいつも足りない状態で、お米を個人で定期的に提供してくれる所があれば、歓迎される。
食べ物を必要としている人に配布する方法は三通りある。
1:フードバンクやフードバンクと提供し認定した拠点にパン、調味料などの食材を集め、持って行って貰う
2:児童養護施設や福祉施設などの施設、団体、個人への宅配
3:炊き出し
食材を確実に行き渡らせる為、食材の配布は、2HJと連携する行政や、福祉事務所、もしくは
NPOからの紹介状がなければ食材を受け取れない仕組みにしてある。
食材の方も、提供してくれる食材卸や食品メーカーからの問い合わせに答えられる様に、
受け取った後はORコードをつけて追跡できる様にするという徹底ぶりだ。
2HJの食材を受け取る人の内訳は、母子家庭の母親や高齢者もしくは失業者で1万世帯に及ぶ。
ここ数年では難民申請者もしくは、申請が却下され、行政の支援を得られない人々も
2HJを訪れる様になったというのだ。
ではフードバンクは誰が何のために創業したのか。
ホームレス程、自分の身の程が判っている人はいない
フードバンクの創業者、チャールズ・マクジルトンさんは、米ミネソタ州生まれ。
高校卒業後海軍に入隊し、’84年に横須賀基地に配属され来日。
小柄なマクジルトンさんは『日本人の身長は私と同じぐらい。ここに住みたいという親近感がわいた』と
当時の事を語る。
兵役後、大学に進んだマクジルトンさんは交換留学生として、’91年に再来日。
上智大に進み、その後は日本で司祭になるつもりだった。
マクジルトンさんは日本で司祭になるにはどうすればいいかと教会の神父に相談すると、2つ条件を出されたという。
修道院で働く事と、フィリピンやインドなど貧しい国の出身の修道士と共に働く事だった。
これらの条件に当てはまる所といえば、当時、日雇い労働者の町と言われた東京・山谷しかなく、
そこで修道士として働いたマクジルトンさんは、ある事がきっかけで、フードバンクを設立しようと思い付いたらしい。
’90年代半ば、彼は修道士仲間と、ホームレスの自立センターを作ろうとしたが、その前に、
ホームレスの立場に立たなくてはいけないと、’97年から一年半、隅田川河川敷で、ホームレス生活をしたという。
マクジルトンさんはホームレスを経験し、路上生活者は、自分の今の姿は自己責任で、こうなったのが、
よく判っているという事、今そこにある問題を自分自身の力で解決しようとしているという事が判ったという。
そんな彼、彼女らに出来る事といえば何だろうかと、考えた末の結論がフードバンク、食べる事は生きる事だった。
山谷の修道士たちと4人で’00年に設立したフードバンクの前身は、設立当初は、食材は集まっても、
困っている人々全員に配る事が出来なかったという。
そこで、どんな人にどういう風に配ればいいのか、考えた末に、現在の様なシステムに構築しなおしたというのだ。
ではマクジルトンさんが目指す、フードバンクの未来とは、どの様なものだろうか。
目標は、食のセーフィティーネットを確立する事
マクジルトンさんが目指すフードバンクの未来は、外国人も含め、日本に住む人全員が安全に生活出来る
食のセーフティーネットを作る事だという。
フードバンクの存在を知り、余った食べ物を寄付したいという人には、待ったをかけている。
その前に、家族で食卓を囲んで、家から余った食べ物をゴミに放るという事をなくしてほしい、
というのがマクジルトンさんの願いなのだ。
外で困っている人に食べ物を分け与えているのに、自分の家の食卓は出来合いのものしか
並んでいないというのであれば本末転倒だと彼は言う。
フードバンクでも、余った食料のうち、生鮮食品やコンビニの弁当や総菜は、断っている。
これらの総菜は余れば引き取り手もなく廃棄されてしまうのだ。
そうした事も考え、食の社会的貢献はまず、自分の家族というコアな部分を見直す事をしてからの方がいいと思う。