日本に足らないのは、良いコンテンツに金を払うという習慣
- 2018/07/19
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WWE、ファンはレッスルマニアへと導かれる
「俺の怒りは今、頂点に達した。お前と決着をつけてやる、次のレッスルマニアでな」
これは、アメリカのプロレス団体「WWE」における年間最大のイベント「レッスルマニア」が近づくたびに、レスラーたちが繰返し口にするコメントです。
「カメラに向かって凄んでいるぐらいなら、今すぐに決着をつければいいのに」と思うかもしれませんが、それは野暮というもの。
週に1回のテレビ放送ごとにストーリーが織り成され、因縁が深まり、気分が高まった視聴者はレッスルマニアを心待ちにするのです。
なぜ、WWEはこの様にレッスルマニアに最高潮が来るように、ストーリーを盛り上げていくのか?
それは「ペイパービュー(pay-per-view)」があるからです。
高額なギャラの支払いを可能にするペイパービュー
現在のプロボクシング興行の聖地といえば、ラスベガス「MGMグランド・ガーデンアリーナ」なのですが、この会場は意外なことに1万7,000人強のキャパシティしかありません。
一方で、日本のボクシングの聖地「後楽園ホール」のキャパは2,005人というのは置いておいて……しばしばビッグマッチがおこなわれる「有明コロシアム」のキャパは1万人、両者を比較すると17:10になりますが、タイトルマッチのギャランティで見ると、その比率は17:10どころではありません。
なぜ、それほど大きくない会場でおこなわれている興行にもかかわらず、フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ戦のような総額300億円超というファイトマネーを払えるのか?
それは「ペイパービュー」があるから。
リングサイドのチケットが高額だからという理由だけではありません。
ペイパービューに馴染んでいる、アメリカという国
ペイパービューとはアメリカでは非常にメジャーなテレビの視聴方法。一定の料金を支払うことでテレビ番組を視聴できるようになるというものです。
日本では馴染みがないものですが歴史は古く、1975年のモハメド・アリ対ジョー・フレージャー戦はペイパービューで放送されていたとか。
これには地上波の難視聴地域を解消するために、ケーブルテレビ網が早くから全土にいきわたっていた、アメリカならではの事情というものがある。
つまりスクランブルを解除することで、料金を払った人のみが視聴できる番組を放送できるという環境が整っていたのです。
ですからWWEは通常放送で散々盛り上げて、レッスルマニアのペイバービューへとつなぐ。ボクシングは通常放送で無名ボクサーの試合を中継し、人気ボクサーの試合はペイパービューで放送する。
ちなみにWWEにおけるペイパービューの販売数は、ピーク時で120万件。
フロイド・メイウェザーvsマニー・パッキャオ戦にいたっては、ペイパービューの販売数は460万件、総額は2億5,000万ドル超だったといわれています。
まあ現在、WWEは有料のWWEネットワークへと移行していますが。
このままでは死ぬ、日本のコンテンツビジネス
つまり、何が言いたいのか?
ペイパービューという下地があったアメリカには、TVなどのコンテンツに金を払うという習慣がある。儲かるから面白いコンテンツが増える、当然の流れだなという話です。
一方で日本はコンテンツは無料という意識が強すぎるから、広告収益に依存型の地上波からなかなか抜け出すことができない。HuluやNetflixが苦戦していると先日も報道されていましたが当然のこと。面白い独自のコンテンツができない、だから苦戦するという悪循環におちいってしまっている。そしてコンテンツは何でも無料という意識はWebの普及以来、強まるばかりと感じるのです。
このままいくと日本のコンテンツ産業は死んでしまうのではないか?
何だか不安な気持ちになってきます。そのためには視聴者側には金を払うという意識が、作り手側には視聴者を喜ばせるという意識がなければダメだと思うのですが、いかがでしょうか?