歯が抜けた!勧められたインプラントってどうなんでしょう?【歯医者アドバイス】

  • 2019/06/02
  • ヘルスケア
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  • 橋詰 和英【歯科医】
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勧められたインプラントってどうなんでしょう?

人間の永久歯は、全部で親知らずを含めれば32本、含めなければ28本あります。
一生涯、これらの歯がトラブルを起こさず、全て残ってくれればいいのですが、そういう人は、非常に稀です。
残念ながら、中高年以降の多くの人が抜歯を経験し、歯を失っていきます。
さすがに、歯を抜いた後、そのままでは具合が悪いので、何かの治療をしなければなりませんが、そんな人に多いのが、どんな治療を受けるべきかという悩みです。
インプラントは、そんな歯を失った時に用いられる治療法のひとつです。
最近では、何かとすすめられる機会が増えてきたようですが、インプラントは、そんなにいいものなのでしょうか
今回は、インプラント治療ってどんなものなのかを解説します。

 

インプラントとは何?

インプラントってどんな治療法なのでしょうか。

○インプラント って何?

インプラントとは、顎の骨にチタニウムでできた人工の歯根を埋めて、その上に上部構造物というかぶせ物を装着して、失われた歯の噛み合わせや外見を回復させる治療法です。
インプラントの歴史は意外と古く、紀元前にエジプトやインカでサファイアや象牙を使ってインプラント治療を試みたことが明らかになっています。
現在のインプラントの治療法は、60年ほど前にスウェーデンのブローネマルク博士が考案した方法が主流になっています。

インプラントの構造

いろいろな会社が様々なインプラントを開発していますが、インプラントの基本的な構造は共通しています。
インプラントは、骨に埋める部分であるインプラント体、歯冠部分の人工歯、もしくは義歯と、それらをつなぐアパットメントというパーツから成り立っています。
人工歯部は、ほとんどの場合、セラミック製の被せ物になっているので、完成した後のインプラントは、本物の歯と同じような自然な美しい歯になります。

 

インプラントの特徴とは?

インプラント治療には、どのような特徴があるのでしょうか。利点と欠点という視点から説明します。

インプラントの利点

インプラントの最大の利点は、本物の歯のようにしっかりと噛めることです。後述するブリッジや入れ歯は、インプラントほどしっかりとは噛めません。
また、他の残された歯に余計な負担をかけることがないというのも利点です。
外観も本当の歯のように仕上げることができるので、違和感がほとんどありません。

 

インプラントの欠点

インプラントは、保険診療では受けられません。したがって、治療費が非常に高額になります。
また、骨にインプラント体を埋め込む手術が必要となるので、何らかの全身的な病気がある場合など、必ずしも治療を受けられるとは限りません。
インプラントを埋め込もうとする場所の骨が十分に残されていないと、インプラント体を埋め込むことはできません。
インプラントと骨が結合するのに時間がかかりますので、治療期間も長くなります。

 

抜けたままにしているとどうなるの?

抜けたままでは

歯が抜けたまま、放っておくと、どのような状態になってしまうのでしょうか?

 

歯並びが歪んでしまう

歯が抜けた場合、後ろ側に歯があると、前に向かって傾いてきます。
噛み合わせの歯があると、上がってきます。
つまり、歯が抜けたままの状態で放っていると、歯並びが歪んでくるのです。

 

むし歯や歯周病になりやすくなる

歯が抜けたところは、食べ物が入りやすくなります。
もちろん、隙間が広いので、挟まった食べ物を取り除くのは容易です。
ですが、歯の表面についたプラークは別です。
プラークとは、歯の表面をこすった時に取れてくる白いカスのことで、その正体はむし歯菌や歯周病菌などのお口のトラブルの元となる細菌の塊です。
これは、しっかりと歯みがきしないと取れません。
ですが、歯が抜けた部分は、意外と歯ブラシを当てにくくなっています。
そのため、プラークがついたままとなってしまうので、むし歯や歯周病のリスクが高まってしまうのです。

 

発音が不明瞭になる

特に上顎の奥歯の場合に現れやすいのですが、歯が抜けたところから空気が漏れてしまうので、発音が不明瞭になるのです。
はっきり話しているつもりでも、周囲の人に「聞き取りにくい」「はっきりしゃべって」と言われるようになります。

 

老けて見える

何本も歯が抜けたままにしていると、頬や唇が落ち込んでしまい、顔つきが老けて見える原因になります。

ですから、何らかの治療をしなければならないことがご理解いただけたのではないでしょうか。

 

インプラント以外の治療法は?

治療法は

歯が抜けた時の治療法は、インプラントしかないのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。
保険診療でも受けられるブリッジと入れ歯という治療法があります。

 

ブリッジ

ブリッジとは、失われた歯の前後の歯を削って、失われた部分を補うような形でかぶせ物を入れる治療法です。

・ブリッジの利点
ブリッジは、後述する入れ歯と異なり、接着剤でくっつける固定式のかぶせ物です。
後述する入れ歯が、食事のたびに毎食後外して洗わなければならないという手間がかかるのに対し、ブリッジは固定式なのでそうした手間と無縁であるという利点があります。
見た目も入れ歯ほどの違和感は少なく、入れ歯は中高年世代にとても抵抗があるであろうことを考えると、心理的にも受け入れやすいのもブリッジの利点と言えるでしょう。

・ブリッジの欠点
原則的に、失った歯が3本以上連続しているときはブリッジを入れることはできません。支えとなる歯にかかってくる負担が大きくなりすぎ、支えられなくなる恐れがあるからです。
また、ブリッジを入れるためには、歯を削らなくてはなりません。
もし支えとしたい歯が、むし歯や歯周病になったことのない健康な歯だった場合、削ることで、歯がしみて痛くなったり、むし歯や歯周病になったりするリスクが生まれます。
しかも、ブリッジの人工歯が入った部分は、歯みがきがしにくくなるので、むし歯や歯周病、口臭のリスクが高まります。

 

入れ歯

入れ歯は、クラスプと呼ばれる金具を用いて、歯に人工歯を引っ掛ける治療法です。

・入れ歯の利点
ブリッジと異なり、歯にかぶせ物を装着しないので、歯を削る必要がありません。
大きさにも制限がなく、極端な話をすれば、歯が全くなくなった場合でも適応できます。
歯を削らないで済むというのも入れ歯の利点でしょう。

・入れ歯の欠点
入れ歯の欠点は、食事をすれば必ず内側に食べかすが入ってくるので、毎食後外して洗わなければなりませんし、寝る前も外す必要があるなどの手間がかかることです。
外出時には、こうした欠点は大きく影響することでしょう。
入れ歯という名前による心理的な抵抗感も無視できません。例えば30代で入れ歯を入れるというのは、なかなか受け入れがたいものがあることでしょう。

 

歯の移植

実は、親知らずが多いのですが、ご自身の他の歯を、失われた部分に移植するという方法もあります。

・歯の移植の利点
歯の移植は、保険診療の適応を受けていますので、インプラントほど高額な治療になりません。
移植される歯は、ご自身の歯なので、拒否反応を示すこともありません。
移植した歯が、しっかりと生着すれば、インプラントと同じようにかみ合わせることができます。

・歯の移植の欠点
移植する歯の形や大きさが、移植したい部分と必ずしも合うとは限らず、適応にならない場合が多いという点が最大の欠点です。
移植する場合、移植される歯は大半の場合親知らずが選ばれますが、それは親知らずがきちんと生えていない、噛んでない場合がほとんどだからです。普通に生えている歯は、役に立っているので移植歯に選ぶことはできません。
もし、失われた歯が前歯だったら、親知らずは形も大きさも全く合いません。
このように、形や大きさから移植が必ずできるとは限らないのです。

 

インプラント以外の治療法をインプラントと比べると

インプラントは、ブリッジと入れ歯のいいとこ取りをしたものとも言えます。
歯の移植と比べてみると、インプラントはいろいろなサイズが製造されているので、前歯から奥歯まで合わせやすいという利点もあります。
一方、ブリッジや入れ歯などのインプラントに対するアドバンテージは、保険診療で受けられるという価格面以外にはなかなか見いだすことは難しいです。

 

まとめ

今回は、最近、何かとすすめられる機会が増えてきたインプラントについて解説しました。
特に覚えておいていただきたいのが、
①インプラントはしっかり噛める
②インプラントは残された歯に負担をかけない
③インプラントは外観に違和感が少ない
ということです。
インプラントは、保険診療で受けられないので高額な治療法ですが、他の治療法にはない利点がたくさんあります。
インプラントが何かと最近すすめられるのには、それなりの理由があるのです。
今回の記事を参考にして、インプラントを検討してください。

この記事の作者

橋詰 和英【歯科医】
橋詰 和英【歯科医】
市中病院の口腔外科で口腔外科部長をしています。親知らずの抜歯からお口の出来物、顎の痛み、口臭、神経痛など様々な病気の治療にあたっています。オヤジの歯・口腔の悩みを解決するためYAZIUPの執筆&監修を行う。
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