お祝いなどで「乾杯」する風習はいつごろから始まったのか?
- 2018/09/24
- グルメ
- 448view
- お酒
- お酒
- スタイル
人間になる以前から続く、酒との付き合い
「その歴史は文字の誕生以前までさかのぼる」こんな風にいわれることもある酒と人間の関わりなのですが、研究によるともっと古く……人間が人間になる以前から、酒は楽しまれてきたのではないか? と考えられるようになりました。
というのは、ヤシ酒でチンパンジーが宴会を開いていたという報告があるから。このヤシ酒とは樹液が自然発酵してアルコールが醸造されたもの、つまり自然発生したものです。
その後、農耕が始まり人間は自分たちで酒を醸造するようになるのですが、その最初は「口噛み酒」と呼ばれるもの。人間が口で噛んだ穀物を集め、自然発酵させることで酒を醸造するというものですが、この手の酒は世界中に存在するもの。
テレビアニメ「はじめ人間ギャートルズ」では、サルにドングリを噛ませた後に吐き出させた「サル酒」を、父ちゃんたちが愛飲していましたが、あの話はまんざらウソでもなかったということですね。
最初に乾杯を発声したのは江戸幕府のお役人
気持ちが高揚する、通常とは違った精神状態になる。
そんなことから酒は古代から聖なるものとされ、神事と深い関係にありました。現在でも神前には御神酒をささげますし、神事の後には御神酒を口にする直会(なおらい)なる宴会がおこなわれます。結婚式の「三々九度」なども掛け声こそないものの、乾杯の一種といえるもの。乾杯のルーツは酒と宗教が結びついたころまでさかのぼることができそうです。
しかし皆で酒を飲むというという行為に「乾杯」の音頭が加わったのは意外と最近のこと。
最初に日本で発声したのは1854年、下田奉行を務めていた旗本の井上清直とされています。
舞台はイギリス側との貿易の決め事に関する会議をおこなった後の宴席。
「私たちの国でおこなわれている様に、音頭とともに酒を飲もうではないか」とのイギリスの提案に応えようとしたのがのが井上清直、どのような掛け声をしたものか? と、しばらく思案した後に「乾杯」といったとか、いわなかったとか。
これに面食らったのがイギリス側。
「Cheers!」ならともかく、よくわからない「KAN-PAI」の掛け声に爆笑、和やかに宴席は進んだといいます。
しかし、気の毒だったのは井上清直。いきなり音頭をとれといわれても、何と発声してよいかわからない。そこで中国の宴会で使われる「カンペイ」を日本式に発音したのではないかと思われるのです。結果、宴席は和やかなムードに包まれたとイギリス側の記録には残っています。
グラスを合わせる起源は、暗殺防止のためだった?
さて、そんな乾杯はグラスを互いにチン!! といわせるのが付き物ですが、この風習も西洋から入ってきたものなのです。起源については「音を出すことで悪霊を払うため」など諸説あり、はっきりしたことはわかっていません。
面白いのは「飲み物の中に毒が入っていないことを確かめるため」という説があること。
ぶつけることで飲み物を飛び散らせ、互いのグラスに入れあってチェックするというのです。実際におこなうには、グラスが砕け散らんばかりの勢いが必要になると思うのですが、実際はどうだったのでしょうか?
延々と続く、中国式の乾杯
さて、先に中国の乾杯(カンペイ)の話をしましたが、中国の場合の乾杯は宴会の最初だけのものではありません。宴会が始まると、あちこちで起こる乾杯の声。誰かが声をかけてくると、その度に乾杯。延々とサシでの乾杯が繰り広げられます。
互いのビジネスのために乾杯、あなたの健康のために乾杯、会社の未来のために乾杯、目が合ったら乾杯……まあ、酒が苦手な人にとっては地獄絵図だと、中国に駐在経験のある友人が話してくれました。
加えて中国の乾杯は、文字通り「杯(さかずき)」を「乾(ほ)」す行為。一気に飲み干さないと失礼に当たるといわれていましたから、友人は宴会になるたびに憂鬱な思いをしたとか。何しろ用いるのはアルコール度数が40%を超える白酒(パイチュウ)です。
中国でも最近では、酒を無理強いすることはなくなったとは聞きますが、乾杯一つとってもお国柄というのは出るものなのですね。