個人間精子取引の問題
- 2017/05/05
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精子バンクの存在意義
世の中には、子供を望んでいても授かることができない夫婦が存在します。不妊治療の末に諦めることも珍しいことではありません。その原因が夫の側の精子の問題である場合、他人の精子を貰ってでも子供が欲しいと思う夫婦があることも事実です。
このようなケースでは、精子バンクと呼ばれる内外の機関を通じ、主に匿名の第三者である男性から精子の提供を受け、人工授精や体外受精の手法を用いて妊娠出産を目指すことになります。少なくとも、夫婦として他人の精子の提供を希望するなら、怪しげなルートや友人知人を利用するなどして、妻が夫以外の男性と性交渉を持って妊娠を目指す手法はあったとしても稀でしょう。
こうして誕生した子供は、戸籍上、夫婦の子として育てられることになります。幸福な家庭を作ることを前提としており、いろいろな問題はあるものの、そこに一定の意義があるのが精子バンクだと言えます。
ところが、最近では「夫などのパートナーは不要だが子供は欲しい」といういわゆる選択的シングルマザーを希望する女性が増えているといわれています。彼女たちが欲しいのは男の精子であり、その点では、子宝に恵まれない夫婦と同じです。違うのは、母子家庭を前提としている点です。
とはいえ、誰にでも簡単に精子を提供するような機関があるわけもなく、こうした女性は民間のサービス、なかでも個人間取引によって妊娠を目指すケースが増えていると問題視されています。個人間取引の場合は、当人同士が接点を持つことになります。そこには、完全な匿名性などあるはずもなく、一度の取引で「後腐れなく」関係が終了する保証もありません。
子供の地位などの問題
また、確実な妊娠を希望する女性が、精子提供者となる男性との性交渉を希望することもあるといわれています。直接セックスして精液を注入た方が妊娠する確率が高いと考えるためか、それほど切羽詰っているためかはともかく、これでは売春の逆パターンと同じではないかとの疑問も生まれます。
女性を「子供を産む機械」呼ばわりした政治家がいましたが、いまや男性は種付けマシーンということでしょうか。もっとも、個人レベルのやりとりでは、女性が自分で膣内に精子を注入するという作業が確実性に欠けるとも考えられるため、仕方ないことかも知れません。それでも、オヤジとしてはトホホな感が拭えません。喜んで相手になるというオヤジは少数派だと信じたいところです。
さらに、相手がどこの誰かがわかっている点も問題を生じやすいと言えます。後年まで、子供の出生の秘密に関するトラブルが続く危険性を排除できません。また、個人間取引において契約上は精子の提供であり、その後の一切を無関係としたとしても、そのような契約にどこまで効力があるかは疑わしい話です。例えば、養育費は子供の権利であり、シングルマザー希望の母親が勝手に要らないとの契約を「父親」と結んでいたとしても、子供側から請求があれば支払う義務が生じる可能性が少なくありません。他人から見れば、単なる男女関係にしか見えない状況ならなおさらです。
そうなると、生物学的・遺伝的な父親である精子提供者サイドからは、法的な父親の地位を否定する戦いが提起されることにもなりかねません。最終的に裁判所がどのような判断をしたとしても、被害を受けるのは子供でしょう。他人の精子で子供を持つことは、オヤジだけでなく、社会全体で考えるべき問題になっています。