北朝鮮はなぜ弾道ミサイルを人工衛星と主張するのか
- 2017/11/07
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ミサイルとロケットは根本的な理論が同じ
近年、北朝鮮が立て続けにミサイルを発射して世界各国の非難を浴びています。このときよく耳にするのが「ロケットで人工衛星を打ち上げた」という北朝鮮側の主張。なぜ軍事利用目的のミサイルを、宇宙開発目的の人工衛星と言い訳するのでしょうか。
それは、ミサイルとロケットの動力理論が同じだからです。両者は高圧のガスを噴射した反動で前進します。このタイプの動力装置は特にロケットエンジンと呼ばれ、外部の酸素などを取り込んで前進するジェットエンジンと区別されます。ロケットが宇宙開発に用いられる理由は、真空状態でも推進力を生み出せるからなのです。
通常、ミサイルといえば爆弾、ロケットといえば宇宙船をイメージしますが、実際にはどちらも積荷です。ミサイルとロケットは爆弾や宇宙船を運搬するための手段であり、動力原理はあくまでも同じなのでミサイルをロケットとする言い訳ができるのです。
ミサイルとロケットは結局どこが違うのか
またミサイルとロケットは基本的な構造もよく似ています。内部は両者とも共通して、主にエンジン部分・切り離し部分・搭載機器・ペイロード部分から構成されています。
理論も構造も同じなら、ミサイルとロケットはまったく同じものなのでしょうか。じつはそうではなく、ペイロード部分に搭載するものが異なります。ペイロードとは「対価を取る荷物」であり、メインの積荷のこと。多くの場合、軍事分野では武器、宇宙開発分野では宇宙船を指します。つまり、ミサイルのペイロードは爆弾、ロケットのペイロードは宇宙船という点が最大の違いなのです。
ミサイルとロケット、つまりロケットエンジンはペイロードで目的が異なるため、実際には詳細な呼び方で区別されます。宇宙船や人工衛星を積んだロケットエンジンは宇宙ロケット、爆弾などの爆発部分を指す弾頭を積んだロケットエンジンは弾道ミサイルと呼ばれます。弾道とは発射された弾丸が空中を飛ぶ際に描く曲線のことです。
ミサイルとロケットが似ているのは誕生の起源が同じだから
それではなぜ、ミサイルとロケットはこんなにも似ているのでしょうか。その理由は誕生の起源が同じだからです。
両者はどちらも第二次世界大戦末期のドイツが開発したV2ロケットをベースにしています。V2ロケットはドイツが開発した報復兵器のひとつで、軍事目的の弾道ミサイルです。世界で初めて実用化されたロケットエンジンは、兵器だったということになります。
ただし、開発の中心となったドイツ人工学者ヴェルナー・フォン・ブラウンはもともと宇宙旅行の実現を目指してロケットエンジンを研究していました。大戦の影響で軍事目的の研究以外を禁止されたため弾道ミサイルの開発を行った経緯があり、宇宙ロケットと弾道ミサイルの開発は表裏一体といえるのです。
技術の進歩は戦争によってもたらされるといわれます。ロケットエンジンも例外ではありませんでした。しかし血で血を洗う戦争にはもはや世界が飽き飽きしています。北朝鮮には早く目を覚ましてほしいものですね。