「どうしてうまくいかないのか?」と悩みがちなビジネスマンに捧げる、鎌倉時代のエッセイ集『徒然草』の名言3選

  • 2018/05/29
  • ビジネス
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  • 八神千鈴
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現代人もうなずいてしまう名言満載の『徒然草』

現代人もうなずいてしまう名言満載の『徒然草』

平安時代に書かれた清少納言の『枕草子』、鎌倉時代に書かれた鴨長明の『方丈記』と並んで日本三大随筆とされるのが、鎌倉時代末期に書かれた兼好法師の『徒然草』です。随筆とは作者の体験や見聞を自由なスタイルで書いた文章で、エッセイと同じ意味。
兼好法師は生涯に不明点が多い人物ですが、もともとは卜部兼好(うらべかねよし)という名前でした。この卜部家が後年に吉田姓へと名を改めたため、江戸時代ごろから吉田兼好と呼ばれます。
一度は朝廷に仕えた兼好ですが、30歳ごろに出家して隠居しました。詳しい理由は不明ですが、自分の利益ばかり求める人たちに囲まれてうんざりしたからという説もあります。
こうして兼好法師となったのちに書かれたのが『徒然草』。だれもが教科書で一度は目にしていますよね。文法ばかりやらされて内容を覚えてない……という方も多いでしょうが、実はこの『徒然草』、多くの処世術をわかりやすく説いており、現代人でも「なるほど」と納得する名言の宝庫です。もちろんビジネスにも応用可能で、特に「こういうことをするからうまくいかない」と教えてくれる言葉にははっとさせられます。
そんな『徒然草』の名言を、3つご紹介します。

 

速やかにすべき事をゆるくし、ゆるくすべきことを急ぎて、過ぎにしことの悔しきなり

速やかにすべき事をゆるくし、ゆるくすべきことを急ぎて、過ぎにしことの悔しきなり

「急いでやるべきことをゆっくりやって、ゆっくりやるべきことを急いでやり、時が過ぎ去るのは悔しいことだ」という意味です。「年老いてから仏教の修行をはじめようと思っていてはいけない」という章段に登場する言葉で、「やりたいことをやらずにいるのも、丁寧にやるべきことを急いでやるのも、後悔のもとである」という人生訓です。
これはビジネスでも同じこと。だれでも「こんな仕事をしてみたい」という野望を抱いていますよね。しかし実際には日々の業務を優先して後回しにしてしまう人がほとんど。しかもその業務に忙殺されて重要な仕事を適当にやってしまい、うっかりミスをしてしまう人も多いのです。
自分の人生は自分だけのもの。目標達成に必要なことの優先順位をしっかり決めて行動しましょう。野望を実現できるかできないかは地位でも資金でも運でもなく、自分自身の行動にかかっているのです。

 

あやまちは、やすき所になりて、必ず仕る事に候

あやまちは、やすき所になりて、必ず仕る事に候

「失敗は簡単なところになったときに必ず起きるのだ」という意味です。「高名の木登り」という、教科書でもおなじみの章段に登場する言葉です。木登りの名人が高い木の上で枝を切る弟子を見守っており、作業中はなにも言わなかったのですが、家の軒先くらいの高さまで降りてきたときにはじめて「気をつけて降りろ」と声をかけます。それを見ていた兼好法師が、「これくらいの高さなら大丈夫だろうに、なぜそんなことを言うのか」と尋ねると、木登りの名人はこの名言を返しました。
ビジネスマンも難しい取引先に向かうときなどは気を引き締めていますから、深刻な失敗はしないものです。むしろ簡単な仕事をするときほど、自分でも信じられないミスをしてしまいがち。慣れている業務をするときは、間違いがないかきちんと確認することがミスを減らします。

 

天下のものの上手といへども、始めは不堪の聞えもあり、無下の瑕瑾もありき

天下のものの上手といへども、始めは不堪の聞えもあり、無下の瑕瑾もありき

「天下の名人でもはじめは下手くそと言われたし、見るに耐えない欠点もあったのだ」という意味で、芸事を身につけようとする人に向けた章段に登場する言葉です。芸事の初心者は「下手なうちは内緒で練習して、うまくなってから人に見せよう」と考えがち。しかし兼好法師は「下手なうちからうまい人に交じって、笑われても平然と稽古を続ける人が最終的に評価される」と語っています。そして初心者を励ますように、この名言を添えているのです。
ビジネスマンも新しいスキルを身につけるときは、周りに知られないようこっそりやりたくなりますよね。ましてオヤジ世代ならば若い部下がつくことも多いので、「バカにされたくない」というプライドが首をもたげるでしょう。しかしわからないことを素直にきける環境にいると上達は早くなりますし、間違って覚えることも防げます。意地を張らず、頑張っているところを見せたほうが失敗は少なくなりますよ。

この記事の作者

八神千鈴
八神千鈴
編集プロダクション、出版社の編集者を経てフリーライター。現在は歴史系記事をメインに執筆。それ以前はアニメ、コスメ、エンタメ、占いなどのメディアに携わってきました。歴史はわかりづらいと思っている方にもわかりやすく、歴史のおもしろさをお伝えしたいです。
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