日産自動車の株は今後どうなったら本格リバウンドするのか
- 2018/11/28
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カリスマを失った自動車メーカーをどう評価するか
日産ルノー軍団の象徴であったカルロス・ゴーン氏逮捕を受けて、11月20日の東京市場では日産自動車株が一時前日比6%以上安い940円まで下げるなど、市場に衝撃が走った。
問題は想像以上に複雑に絡み合っている様子。
ゴーン氏による不正な報酬受け取り隠しに始まり、一部では「日産側のクーデターでは?」という憶測まで飛び交っている。
これ以上の不祥事があったのかどうかも含めて、いまだこれといった本質の結論は出されていない。
株式市場が最も嫌うのはいつの時代も「不透明要因」である。
はたしてこれがゴーン氏主導の「独り相撲」なのか、それとも日産側が仕組んだシナリオなのか、もっと大きな悪が暴かれる過程でしかないのか、その辺がクリアにならない限り、すぐにも日産自動車株がリバウンドすることはないだろう。
ないのだけれど、今は株式市場全体に元気がない最中でもあり、早晩相場全体の底上げは期待できる。
そのときにはたして日産株もついていけるのか、検証してみたい。
ゴーンがいなけりゃ船は沈む、の間違い
これまでカリスマ性を誇ったゴーン氏の退場だけで、日産自動車の行く末を案じているマスコミも多いが、それはちと違う気がする。
あくまで日産側は「これまでのゴーン体制で生じたひずみ」(会見では負の遺産とまで言い切っていたが)を直すために動いたという立場であり、その言葉だけを取り上げれば、
▼日産にもうゴーンはいらなくなった
という評価でいい。
そこで「ゴーンがいなけりゃ日産は暗黒時代に逆戻り」のような発想をする市場人こそ、日産には第2のゴーンが必要だといっているのと同じだ。
そして第2のゴーンはやがて、同じ過ちを繰り返し、日産から退場するだろう。
99年当時はともかく、今現在の日産にはゴーンはいらないのである。
ゴーンがいないことを嘆いてばかりいては1文の利益にもならない。
日産の新しい体制づくりを評価して、その上で失望するなら売りに回ればよい。
株式市場はその辺に敏感で、当日夜の欧州市場ではルノー株が一時15%以上下げたにもかかわらず、翌日の東京市場で日産株は6%の下落にとどまった。
市場は少なくとも「今困るのは日産よりルノー」というジャッジを下したのである。
配当が6%だから買い、の間違い
普段から日産自動車は高配当銘柄として有名だが、今度の騒動によって一段とその傾向は強まり、現在のところ予想PERが7.5倍、予想配当利回りが5.9%になっている。
同じ自動車メーカーの雄、トヨタと比べても、予想PERが8.6倍、予想配当利回りが3.2%だから、日産の利回りが飛び抜けていることがわかる。
しかし自動車業界の業績予想はたいへん厳しい。
19年3月、20年3月の予想営業利益こそともに微減程度だが、予想純利益は大幅減だ。
もともと自動車つまり輸送用機器は景気敏感株であり、リーマンショックを例に挙げなくても、ダメなときは利益ゼロどころか、一気に赤字になる業種。
日産の19年3月期純利益予想は16年3月期よりも低い水準。
16年といえば日産株が今よりもっと低い900円そこそこで年中うなっていた時代であり、たとえ配当6%を持ち出しても現在の水準で株価下落が止まる保証はどこにもない。
ないばかりか、頼みの配当そのものが減額という憂き目にあう危険性だってある。
配当で日産株を評価するのは危険だ。
最大のポイントは「ぼっちを防げるか」
ここまで日産株を買う買わないの両方からみて、ゴーンがいなくても大丈夫なこと、でも割安指標を見て買うのは危険なことの2点を指摘した。
しかし今回の騒動の結果起こる地殻変動として、一番知りたい重要なポイントは
▼日産は今後、世界の誰と組んでビジネスをするのか
である。
あのトヨタでさえ、苦手な分野はだれか他社を連れてきて助けてもらおうとする時代である。
とくにもう避けて通れなくなった自動運転技術の普及や進化には、どうしても異業種とのコラボが必要になる。
そのときに、今回の「お家騒動」が世界に悪い印象を与えないだろうか、ということだ。
日産は欧米企業と風土が合わない、いらなくなったカリスマはポイッと排除する、報酬がケチくさい、また反対に日産側のコンプライアンスがなっていない、と見る向きもあるだろう。
おそらく今後も頼りにならないルノーはさておき、混迷の自動車業界で日産はいつまで「ぼっち」に耐えられるのだろうか。
もし日産が今度の件を機に古いパートナーを解消し、次の仲良しパートナーをどこからか見つけてきたら、私はそのときこそ日産株の買い場であると判断したい。
それがVWだろうが、GMだろうが、新興IT企業だろうが、トヨタであろうが…。