花形監査法人を、5年以内に辞める若手公認会計士たち、その本音とは?
- 2018/09/07
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合格率1割の難関である公認会計士は、筆記試験突破の難しさだけでなく、2年間の実務経験がネックとなる。
難関を突破したにも関わらず『ペーパー資格者』という人も居るはずだ。
が、近年、大手監査法人は、公認会計士筆記試験合格者だけでなく、将来、試験に挑戦するであろう日商簿記試験1級合格者や、経理実務経験者をヘッドハンティングしている。
大手監査法人といえば、新日本有限責任、トーマツ、あずさ、PwCあらたの4つ。
この4つで上場企業8割を監査し、それぞれで2割ずつ監査する会社をシェアしている。
海外の大手監査事務所と提携しており、監査に携わる事で、グローバル企業の仕組みが判るのも特徴だ。
だが、今年4月、あずさが新規監査を2か月打ち切るなど、深刻な会計士不足に陥っている事が判明。
具体的には、新人~5年目までの公認会計士が激減しているという。
これから大手監査法人を担うであろう人材が激減している背景にあるのは何なのか。
意外に知られていない、公認会計士の試験
公認会計士の試験は、以下の3つの要素で構成されている。
1:短答式試験
2:論文式試験(1の合格者のみ)
3:2年の実務経験後の修了考査(2合格後に、監査事務所に入社)
合格率の高さを誇る専門学校でも、短答式の合格率だけを売りにしている上、知識の量や過去問だけで勝負するのでなく、知識を仕事にフルに役立てられるかという『質』を試験で求められるのが判る。
試験日程は、短答式は年二回、論文式は年一回。
平成30年度の試験日程を見ると、29年6月に試験日程を官報公示。
短答式試験の1回目願書受付は、29年8月~9月、2回目は30年1月~2月。
1回目短答式試験は29年12月、合格発表は翌年1月、2回目試験は30年5月で、合格発表は6月だ。
短答式の合格者が出そろった所で30年8月に論文式試験が行われ、11月に論文式試験合格発表となる。
公認会計士監査審査会によると、平成29年度(昨年度)の短答式受験者は10939人、論文受験者は3306人。
最終合格者は1231人と、合格率は11.2%、やはり1割だった。
監査法人では、2年の実務経験を積むために入社した人を『スタッフ』と呼び、業務補佐をさせている。
ここ5年来では、4大監査法人に入社する公認会計士が多いのは、経験を積むのにちょうどいいのと、新人でも平均年収500万円が保障されているからだ。
にも関わらず、彼らは実務経験後、やめていくという、それはなぜなのか。
実務経験がほしいから大手法人を選ぶ若者たち
公認会計士の仕事は会社の監査だ。
資本金5億円の企業は会社法上『大会社』となる為、法律に従い、定期的に第三者のチェックを受けなければいけない。
監査法人の会計士は、形式上は監査先の企業に雇われることになるが、本質としてやることは、企業の背後にいる株主や投資家を守ることだ。
本来なら、やりがいがある仕事なのだが、実務はそういうわけではない。
内部資料の作成に追われ、3000人以上いる社員の誰か誰かも判らないまま毎日働き、株主や投資家からは、『企業の黒子は黙って働いて当たり前』と思われる。
社に戻れば、守備義務という4文字が待っている為、喋れない事も往々にしてある。
会計財務のCPA会計ブログによると、スタッフの平均年収は500万。
マネージャーになると、800万、パートナーになると1500万と、昇給すれば稼げるのは事実だ。
だが社に残ってまで出世を目指そうと思わないのは、入社した時に、不毛な忙しさにさらされるからだろう。
その為、実務経験修了考査に必要な年数と、転職時に有利な実績を積み上げた後、彼らは去っていくのである。
そして彼らは花形の監査法人を捨ててどこにいくのだろうか。
スタートアップや中小企業に魅力を感じる若者たち
大会社の不備をチェックする監査に嫌気がさした若者が転職する先は、中小企業やコンサルだ。
新規株式公開(IPO)に必要な知識をベンチャー企業にレクチャーする事もある。
独立開業して成功する例は一握りなので、彼らの多くは、様々な他の仕事をこなしながら、大手監査法人で得た知識をこれらの企業に生かしている。
中小監査法人やスタートアップ企業で働く事や、コンサルタントになる事のメリットは、クライアントとの距離の近さだ。
顔の見えない大会社の経理監査をするのではなく、顔の見える人同士で人脈形成が出来る事がメリットである。
唯一のデメリットがあるとすれば、福利厚生だろう。
確かに大手監査法人は、様々な福利厚生が充実している上、退職後、会計士の登録料を初めて自腹で払ったという人もあるかもしれない。
いかがだろうか。
大手監査法人の給料は推定800万とされているが、それを捨ててでも転職する若者が相次ぐのは、彼らが仕事にやりがいを見出したいからだろう。