何故コダックは失墜し、富士フイルムは生き残ったのか?
- 2018/12/16
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どの企業にも求められるのは、ピンチをチャンスに変えられる力と組織の柔軟性だ。
以前、国の威信をかけて取り組んだ事業の比較で東海道新幹線とコンコルドの例を挙げた。
ピンチをチャンスに変えた東海道新幹線が生き残り、リスクを隠し通したコンコルドが失墜したのは目に見えて判る事実だ。
では写真フィルムのトップメーカーだったイーストマン・コダックと富士フイルムの命運を分けたのは、何だったのか。
知的財産を生かして生き残る事が出来るか
コダックと富士フイルム同社共々銀塩フィルムが廃れる事は判っていたという。
両社の命運を分けたのは企業の経営理論の在り方だ。
経営理論学教授デヴィット・J・ティース(カリフォルニア大バークレー)によると、危機に瀕した時に企業が取る企業戦略には二種類あり、それは以下の通りになる。
1:オーディナリー・ケイバビリティ(通常経営)
2:ダイナミック・ケイパビリティ(変化経営)
前者は、事業スタイルを変えず、利益最大化を優先し、効率を高め、コストカットし、その一方で得た利益により自社株を買い取るというものだ。
それが大規模になるとカルロス・ゴーンが日産をV字回復させた戦略とほぼ同じになる。
後者は、会社そのものを存続させる事を主の目的とし、事業スタイルを変える事も厭わない。
時代の変化を感知(センシンク)し、会社内で利益を生み出す機能を作り(シーシンク)し、資産を再編成する(トランスフォーミング)する。
海外でこれに成功したのがイケアだ。
創業者のイングヴァル・カンプラードが雑貨店を開いた事から始まったイケアは、家具にまつわるものをすべて商品化する事で『会社』として生き残った。
日本自動車メーカーならマツダだろう。
大正9年(1920年)に、コルク会社として創立したマツダの母体・東洋コルクは、時代の変革を経て、小型トラックを製造する事になった事から自動車業界に参入。
’60年代にロータリーエンジンを開発し、自社のステイタスを築き上げ、今ではトヨタ、いすず、スズキらと車両提供面で提携している。
日本では、ダイナミック・ケイパビリティが早くから受け居られる土壌にあり、今現在、日本で生き残っている企業や、大手メーカーの企画で生き残っているものは、ダイナミック・ケイパビリティを採用したものが、ほとんどだ。
では、コダックと、富士フイルムの命運をわけたものは何だったのか。
ユーザー目線に立てなかったコダック
実は世界初のデジタルカメラの試作機を作ったのも、写真シェアサイトを買収したのもコダックだった。
先見の明はあるのだが、ユーザー目線で生かせなかったのが最大の敗因だ。
それもコダックが、株主の意向を重視し『オーディナリー・ケイパビリティ』にこだわったからだ。全ては『銀塩フィルムと映写機ユーザーの為』という考えで、まとめてしまったコダックは時代の波に乗り遅れ、カメラと携帯電話が一体になるという今では当たり前の考えにも乗り遅れた。
’75年にコダックの技術者スティーヴ・サッソンが作ったデジカメの試作機は、1枚撮影するのに20秒かかった上、画質は荒く、映像をみるのにブラウン管を見る必要があった。
この時コダックの技術者は製品化する為の技術革新を怠ってしまった。
日本にはスマホやPCとwifiで繋ぐことで防犯カメラの画像を見る『セーフィー』というシステムがある。
これは創立者の男性が、家に防犯カメラの画像が荒く専用媒体を通さないと見れない事に失望した事が開発のきっかけとなった。コダックと真逆の発想だ。
コダックは’01年に写真シェアサイト『Ofoto』を買収したが、銀塩フィルムユーザー向けに公開した為に登録者が伸び悩んだ。
インスタの様に、ネットで写真をシェアするのが当たり前という発想がコダックにはなかった。
これらの積み重なりから、コダックは’12年に破産法を申請、今まであった特許も手放す羽目になった。
一方富士フィルムは、ダイナミック・ケイパビリティを取り入れた典型的な例だ。
液晶を保護する為の特殊フィルム作りをしたり、フィルムの乾燥を抑える為にコラーゲンを使う技術を化粧品ライン『アスタリフト』に生かした。
富士フイルムが化粧品業界に参入した事により、他の製薬業界や食品業界がこぞって化粧品業界に参入する様になったのは、言うまでもない。
日本企業は、自社の知的資産を再配置、再構成、再利用しやすいのが利点だ。
社に独裁権限を持つ人間が居ない限り、人員の配置がしやすいという事も挙げられる。
いかがだろうか。
ピンチをチャンスに変える為には、企業も中身を変えていかなくてはいけない。
コダックと富士フイルムの比較はいい判例になるだろう。