高級時計の世界でも進むSPA化、小売店はどうするのか
- 2019/02/24
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大手スウォッチグループがバーゼルから脱退
今年も1月14日から4日間、スイスの首都ジュネーブで「ジュネーブサロン(SIHH)」が開催されました。SIHHとは高級時計を集めた展示会。カルティエを中心としたコングロマリット「リシュモン」を中心に、出展したブランドは30以上。オーデマ・ピゲやリシャール・ミル、ランゲ&ゾーネ、ヴァシュロン・コンスタンタン、パネライなど錚々たるメンバーが顔をそろえたのでした。
その一方で元気がないとされているのが、毎年3月に開催される、世界最大の時計・宝石の展示会「バーゼル・ワールド」、2011年に2,000社の出展を記録して以来その数は減少、昨年は実に650社となってしまいました。そればかりか追い討ちを欠けるように、昨年の夏にはスウォッチグループがバーゼルへの出展を取りやめると表明。ますますバーゼルに暗雲が垂れ込める格好になっています。
要はコストに見合わないと判断された?
スウォッチと耳にして多くの人がイメージするのは、プラスチックを多用したチープなファッション時計でしょう。しかし、スウォッチ「グループ」となると話は大違い。ブレゲやブランパン、グラスヒュッテ・オリジナル、ハミルトン、そしてオメガといった18のブランドを傘下におさめていますから、これらが一気に抜けると、ますますバーゼルの会場は寂しくなるはず。
原因は、日本円で56億円という巨額な出展料だとか。入場料さえ払えば誰も参加できるというバーゼルのカジュアルな雰囲気が、高級時計の商談にむいていないこととあわせて、高額な出展料は常々、バーゼル・ワールドの批判の種となってきました。
そしてSIHHからも高級ブランドが脱退
ならばSIHHが安泰かというと、決してそうではありません。今回を最後にSIHHからの撤退を表明しているのは、オーデマ・ピゲとリシャール・ミル。
オーデマ・ピゲの看板モデルといえば「ロイヤルオーク」、八角形のベゼルを本体にネジ止めした印象的なルックスは、誰もがどこかで目にしたことがあるはず。創業は1875年という老舗、スイスの高級時計を代表するブランドです。
一方のリシャール・ミルも新興ながら、価格帯ではオーデマ・ピゲを上回る高級ブランド。チタンやカーボンなどハイテク素材を用いた先鋭的な設計は、他のブランドの追従を許さないもので、多くの芸能人やスポーツ選手が愛用していることでも知られています。
バーゼルと比較して少数先鋭的な趣を持っていたSIHHだけに、この2つブランドが脱退するのは大きな痛手となっているはず。バーゼルにおけるスウォッチグループ脱退と同様、ダメージを負うことでしょう。
高級時計の世界でもSPA化が加速中
ジュネーブサロンにしてもバーゼルワールドにしても業者向けの展示会、販売代理店に買ってもらうことや、取引先の新規開拓が大きな目的でした。しかし、オーデマ・ピゲやリシャール・ミルが近年、力を入れているのが直営店。スウォッチグループもブレゲやブランパンといった高級ブランドを中心に、直営店を世界の主要都市に展開しています。
つまり、どこかに卸すよりも自社で製造販売したほうが、メリットが大きいと判断しつつあるのでしょう。この動きどこかで見たことがあると思ったら、ファッションの世界で90年代に進んだSPA(製造小売業)化と同じ。洋服ほど数がさばけない高級時計の世界ですから、利益率重視のオペレーションが取られるのも当然といえるでしょう。
となると、苦しくなってくるのが街の時計屋さん。これからますます、小売店にとっては厳しい時代へと突入していきそう。ショップ独自の視点で商品が編集された個性的なお店、貴重な存在だと思うのですが。