米国スポーツ賭博合法化?その前にファンタジー・スポーツって何ぞやを学習しておこう
- 2019/01/21
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米国では、一部の州を除きスポーツ賭博が禁止されているが、合法化されるかどうかが社会問題となっている。
この問題は後程ふれるとして、その前に米国のスポーツ賭博の特殊な事情として、おさらいしておきたいのが、ここ10年間で米国内で急成長を遂げた『ファンタジー・スポーツ』がスポーツ賭博合法化で名乗りを挙げた事だ。
米国のスポーツ賭博事情を説明する前に、ファンタジー・スポーツとは何ぞやという事を頭に入れておこう。
ファンタジー・スポーツって何?
ファンタジー・スポーツの発症は’80年代の米国のスポーツバー。
一部の野球マニアがスポーツバーで紙と鉛筆を片手に、実際のプロ野球選手を、自分たちが決めたルールでチーム編成を決め、対戦させる事から始まった。
いわゆる空想上の『オールスターゲーム』から始まったという事になる。
野球マニアの間のボードゲームの領域を出なかったこれを米国中に広めたのは、’90年代に広まったネットの力だった。
プロバイダやメディア各社が次々と資本元として参加する様になり、今ではこのゲーム、年2000万人が遊んでいる。
最初は野球だけで始まったが、いまでは野球だけでなく、バスケットボール、フットボール、サッカーと分野が別れ、メジャーリーグ、スポーツ中継をするメディアがスポンサーに付く。
『ファンタジー・スポーツ』の醍醐味は、実際の選手のシーズン中の実際の成績がゲームにそのまま連動する事。
野球であれば打者がホームランを売ったり、ピッチャーが三振を取ればゲームのポイントがあがるという制度だ。
紙に書いている時点では『オールスターゲームを自分で作って仲間内と対戦する』というモノだった。
今では映画『マネーボール』のブラット・ピットの様に、メジャーリーグのGMになった心境で、コンピューター上で、自分の仮想チームを作り、ゲームの結果次第でスタメンを入れ替え、トレードする事になる。
ゲームの参加料は5ドル(600円)から25ドル(3000円)で、参加料により、優勝賞金ランキングが変わるという所は、まさにスポーツの世界と同じ。
5ドルであれば優勝賞金は、1万5000ドル(約180万円)、25ドルなら最高1億2000万円手にする事も夢ではない。
グーグルも投資するゲームとあり、ハマっている年代は、比較的お金に余裕のあるデジタルネイティブ。
ファンタジー・スポーツ事業協会(FSTA)によると、米国でのユーザ数は約3200万人で、これからも増える事が見込まれている。
ユーザーの年代やゲーム時間、個人情報を関連会社が分析し、攻略法を有料メルマガでユーザーに配布。
これらの関連サービスにユーザーが費やす費用は467ドル(約5万6000円)と分析されている。
これだけ巨額の金が動き、決済会社や支払い代行業者にとっても十分メリットがある、一大企業、過去に問題にはならかったのだろうか。
現代の主流はDFS
無論、ファンタジー・スポーツの発展には、幾度となく壁にぶちあたる事はあった。
まず最初にプロスポーツ選手の肖像権問題だ。
それまで、各社は球団側に肖像権を使うとしてライセンス料を支払っていたが、’06年に、MLBからライセンス契約を打ち切られたファンタジー・スポーツ事業者CDM社が訴訟を起こし勝訴した事で業界内の問題が解決した。
もう1つは、参加者が年間を通してプロスポーツの動向を見守る必要があり、根気が必要だったことだ。
これは、デイリー・ファンタジー・スポーツ(DFS)が流行となった事で、参加者の敷居が低くなった。
DFSは、一週間おきに参加者がチームを作って参戦するゲームスタイルで、勝てば賞金が貰え、負ければ参加料を取られるというもの。
このゲームスタイルが主流になってから、ドラフトキングス(DraftKings)とファンデュエル(FanDuel)が市場をほぼ独占。
日本でも、ファンタジースポーツは、’95年にファンタジーベースボールジャパン社が名乗りを挙げ、スポーツナビも市場に参戦したものの、システムそのものは日本に馴染まず、どの事業もDFSが本格的に始まる前に撤退している。
’18年にドコモの子会社が再スタートさせたが、スポーツ賭博につながらないように、いかに楽しませるかで苦戦している。
では事業は、爆発的に展開したものの、ファンタジー・スポーツが賭博に引っかかる最大の焦点となっているのは何だろうか。
今以上に犯罪大国になる危険性も
DFSは掛け金がお小遣い単位の為に、依存症を引き起こしやすく、気が付けば借金地獄になる。日本における1円パチンコと似ている感覚だ。
米フロリダで’15年、アントニオ・ゴメスと、ジョン・ゼレックという2人のプレーヤーが、DFS大手2社及び、メジャーリーグを含むファンタジー・スポーツに出資するプロスポーツチーム団体、タイムワーナー、20世紀フォックスなど関連メディア団体、カード会社、銀行、決済代行会社など50社を相手どり、訴訟を起こしていた事が明らかになった。
内容は、LAの様にギャンブルが合法化された土地ならいざしらず、そうでないと言い切りマフィア賭博方式で参加者から金をむしりとっているというものだった。
実際にNBAリーグ幹部が、ファンデュエルの幹部の一人である事や、野球賭博を行った選手を永久追放しながらドラフトキングを擁護するMLBのコミッショナーの態度も、訴訟の対象にしている。
この訴訟、辣腕弁護士のアービン・ゴンザレスが付いた事で、メディアや球団側も、冷や汗ものとなっていた。
この一件を受け、ボストンでは、ファンタジー・スポーツそのものの規制を設ける法令案を出そうと動いているという。
だが今回のスポーツ賭博合法化に、いち早く名乗りを挙げたのが、ファンタジー・スポーツだ。
訴訟を起こされても、国にギャンブル依存症が増えて、今以上に米国が犯罪大国になっても何のことというのが、ファンタジー・スポーツ業界の本音らしい。
PGA全米ゴルフ協会では、この表明をうけ、所属選手たちにファンタジー・スポーツの広告塔にならないよう通達を出したという。
もしも貴方がスポーツ関係の仕事をしていて、この手のスポンサー契約の依頼が来た時。
喜ぶだろうか、それとも断るだろうか。