『リッツ』『オレオ』海外お菓子を販売するモンテリーズってどんな会社?
- 2018/05/28
- ビジネス
- 605view
- 国際情勢
- お菓子
- ビジネス
- 会社
- 国際情勢
- 海外
- 経済
- 食品
リッツ、オレオ、クロレッツ、メントス、リカルデント、ドクター・ペッパー…。
ここまで書いたメーカーで、『お菓子の名前ね』と判る人が多いだろう。
発売元、輸入元は、と聞かれると、ネスレ、ナビスコと見当違いの答えが返ってくるのがオヤジなのである。ナビスコならまだいい、これらの一部のお菓子は、つい2年前までナビスコの傘下だったメーカーだ。
今、これらのお菓子は一つの会社が輸入販売元となっている。それはどんな会社なのだろうか。
モンテリーズって?
モンテリーズは、米イリノイ州に本社があり、世界165か国で事業を展開している製菓、販売代理店だ。
母体となる会社は、緑のパルメザンチーズの筒で有名なチーズ会社・クラフト。
1903年に創業したクラフトから、菓子部門が独立したのが’12年、クラフトから独立した菓子販売部門は、モンテリーズ・インターナショナルと名乗る事となった。
同社のCEOは、長年クラフト社で女性社長として指揮を執っていたアイリーンも・ローゼンフィールドだったが、昨年から、リストラやテコ入れ、M&Aを視野に入れ、冷凍食品会社マケインフーズのCEOだった、ディルク・バン・デ・プット氏に交代している。
大手グローバル食品業界参入としては若い会社だ。
昨年度の売上げは、ビスケット41%、チョコ31%、ガム・キャンディ14%、その他8%。
地域別シェアで見ていくと、欧州が4割を占めており、中近東が2割、米国でのシェアは6%と低いが、売上だけを見ると、ネスレ、ペプシに次ぐビック3になろうとしているのだから驚きである。
米国国内に限ると、チョコの売り上げは、ハーシーがトップを占めており、次にモンテリーズ、3位がスニッカーズやM&Mなどを手掛けるマーズが僅差で並んでいるというのだから油断できない。
大手食品業界は、投資家の目からみれば安定供給が見込まれる有力株だ。
その為、経営陣に有名投資家や、投資銀行のCEOが名を連ねている事も珍しくない。
モンテリーズ社も例外ではなく、利益を捻出する為に、社内の投資家や投資銀行出身のCEOから、脇腹をつつかれるかの様に、リストラをはじめとした改善策を迫られているのは事実なのだ。
では、モンテリーズ社だけでなく、ネスレ、ペプシをはじめとする、大手グローバル食品業界が、苦戦している理由はなぜなのか?
食品業界の低迷の理由は消費者意識の違い
モンテリーズに限らず、大手グローバル食品メーカーや食品を扱う商社が苦戦する理由は、開発した新商品が、市場とミスマッチだった、企画部から画期的な案が出てこないというわけでもない。
ここ20年来で大きく変わった消費者のモノを選ぶ意識、買う意識が、モノを作る側に伝わってないのが原因だ。主な要因は、下記の3つがあげられる。
1:健康志向で本格的な消費者が増えた
2:大手メーカー商品よりも、安価でそこそこの品質のPB(プライベートブランド)を、消費者が選ぶ様になった。
3:大手食品の流通が『スーパーありき』でなくなった。
1は、新鮮な食材、温かい食品を求める消費者が増え、『いかにもアメリカン』なお菓子が売れなくなった。オヤジの母親世代の頃は、夢のアイコンだった舶来製のお菓子も、今では健康の敵なのだ。
2は、日本の大型フランチャイズスーパーの棚を見れば一目瞭然だ。
スーパーでキットカットを買い物かごに入れようとしたら、妻にバレ『こっちでいいでしょ!』とスーパーのPBのチョコと交換させられたイタイオヤジもいるかもしれない。
英国はもっとシビアである。
同国で1920年代から大人気のチョコがけビスケット『ジャッファ・ケーキ』が、生活必需品に入らず、『チョコがかかってるビスケット』というだけで『贅沢品』と思われ、20%の消費税がつくことになったのだ。製造元のユナイテット・ビスケット社が裁判を起こし、国を巻き込んだ裁判になった。
3は、今お菓子ってどこで買っているだろうか。
スーパーだけではない、ドラッグストア、コンビニ、ネット通販、手に入れようと思えばどこでも手に入れられる。こうした状況も実は、大手グローバル食品業界のクビを締めているというのである。
では、モンテリーズ社がリストラや、M&A以外に行った具体的打開策とはどの様なものだろうか。
逆風に耐えるためには、PBにも負けない製品作りが大事
モンテリーズ社が行った具体的解決策は、健康志向の商品の開発と、パッケージの見直しだった。
今までは、パッケージで栄養成分が、さっぱり判らなかったものの、パッケージを見れば、栄養成分が判るように明記し、おいしさを損ねることなく、塩分、糖分を減らす企業努力をした。
その末に開発したのが、ベルビータの朝食用ビスケットだ。
ビスケット1食分(約4枚)で、バゲット1/4本と同程度のカロリー(250kcal)が取れて、食物繊維が豊富というこの商品。
日本ではビスケットというと甘いお菓子だが、海外では朝食用ビスケットは、朝食シリアルコーナーに陳列されていて、手間暇をかけたくないが健康には気を配りたいという現代人にマッチしたのだという。
この様に、PBの逆風にも強い独自の商品が次々開発出来る様になれば、万が一、他社から、M&Aを受けたとしても大打撃を受けなくて済むかもしれない。
ナビスコは、日本法人を作る際に、山崎製パン、双日とライセンス契約を結んだが、最終的に、ナビスコジャパンのオリジナル開発商品として現在も残るのはチップスターだけとなってしまった。
お菓子メーカーがM&Aに対抗する為には、チップスターの様な『何があっても社に残る売れる商品』を最低でも、3つは作っておかなくてはいけないと思う。
モンテリーズ社は、’16年6月に、チョコ部門強化の為、ハーシーに230億ドル(2兆4500億円)の買収を提案したが、この頃、工場を閉鎖しリストラをする事で利益を上げていたモンテリーズは、人材カットを嫌うハーシーの経営陣に買収を拒否された。
もし成功していれば、グローバス菓子メーカーで、トップに踊りでたかもしれなかったが、それも仕方がない。
だがモンテリーズも油断はできないのだ。
モンテリーズの親会社、クラフトは、モンテリーズを切り離した後、ケチャップで有名なハインツを買収。
コストカッターとして有名な投資会社・3Gキャピタルと、ウォーレン・バフェットが株の7割以上を保有することで、徹底的なリストラを行い利益を出してきた。
そのクラフトが、次の買収先の矛先を向けるのがモンテリーズかもしれないという事なのだ。
この動向はぜひ見守りたいものである。