部下にやる気を出してもらうには!戦国のリーダー5人の名言
- 2019/08/07
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戦国武将の人材活用術は現代にも通用する
ある程度責任ある立場になると、自分の仕事と同じくらいに部下の管理も大切になりますよね。とはいえ部下の個性はさまざま。全然やる気が感じられない部下を持て余してしまう……なんてこともあるでしょう。
そんなとき、「社会人としての自覚や責任感が足りない」と相手を責めるのは簡単です。
しかし部下がそんな態度を取る本当の理由は、職場や上司にあるかもしれません。もしそうなら、責めてしまえばさらに部下の心は離れて管理が難しくなります。
実は、「部下の意欲を引き出して活き活きと仕事をしてもらうにはどうすればいいか」というテーマについては、多くの偉人も頭を悩ませています。むしろ、このテーマを乗り越えた人物こそが偉人になれたといえるでしょう。
中でも、弱肉強食の時代に軍勢を統率して戦った戦国武将たちの人材活用術は、現代に通じるものがたくさんあります。
今回は、そんな人材活用術のエッセンスが詰まった戦国リーダー5人の名言をご紹介します。
武田信玄「人材はスキルを見て活かす」
「人をばつかわず、わざをつかふぞ」
甲斐(現在の山梨県)の虎と呼ばれた武田信玄の名言です。「人を使うのではなく、できることを使う」という意味で、信玄をはじめとする武田一族の軍略をまとめた軍学書『甲陽軍鑑』に登場します。
部下を配置するとき、普通は「人単位」で考えますよね。
しかし信玄は「スキル単位」で考えることが効率的な適材適所につながると考えたのです。「このプロジェクトにはどんなスキルが必要か?」という観点で配置を行えば、今まで思いつかなかったチームができるかもしれません。
そして、得意な仕事を任された部下は意欲的に取り組むでしょう。
信玄は部下のチーム分けを重視しており、正反対の性格同士でコンビを組ませるという工夫もしていました。たとえば、無口な馬場信房とお調子者の内藤昌豊コンビ、直情な山県正景と慎重な高坂昌信コンビなどです。この4人は武田四天王とも呼ばれる名将ですが、名将になれたのは信玄の名采配でお互いに長所と短所を学べたからともいえるのです。
そして信玄は自ら名将を次々育てたからこそ、戦国最強と恐れられた武田氏家臣団を率いることができたのです。
黒田官兵衛「意見する部下ほど重く用いるべき」
「我には常に異見をすべし」
天下人・豊臣秀吉の軍師をつとめた黒田官兵衛の名言です。「私には常に異なった意見を言いなさい」という意味で、戦国時代から江戸時代中期までの名将の優れた言動をまとめた列伝『名将言行録』に登場します。
この言葉の根拠となるのが、「人間には必ず相口(あいくち)と不相口(ふあいくち)がいる」という内容です。「相口」とは相手の心をよく理解できる空気を読める人、「不相口」とは逆らって意見を言う人を指します。通常は、波風を立てない相口が好まれますよね。
しかし官兵衛は、不相口の意見にこそ自分や自分のプロジェクトの欠点を改善するヒントがあると考え、あえて不相口の部下を求めたのです。
実際に、官兵衛はリーダーに物申すことを主眼とした「異見会」というミーティングを後継者の長政とともに開催しています。この異見会によって黒田家は政治をフラットに見ることが可能になり、官兵衛死後も受け継がれてなんと明治維新の頃まで続きました。
上司は不相口の部下の意見をどんどんききましょう。そうすれば上司は仕事のヒントを得られる一方、部下はやりがいを感じて意欲的になり、ウィンウィンの関係になれるのです。
真田信之「率先して動く部下は成績がいい部下より組織のためになる」
「一番乗は一番首より聊(いささ)か上功たるべし」
江戸時代に松代藩(現在の長野県の一部)を統治した松代真田家の初代・真田信之の名言です。「敵陣に最初に乗り込む一番乗りは、敵将の首を最初に上げる一番首より上の功績である」という意味で、こちらも『名将言行録』に登場します。
一番乗りと一番首を営業の仕事にたとえれば、一番乗りは新製品の営業を最初にする人、一番首はその契約を最初に取る人といえるでしょう。それならば、営業成績になる一番首のほうがより上の功績のはずです。
なぜ、信之は一番乗りをより評価すると言ったのでしょうか。
それは、一番乗りのほうが組織のためになるからです。一番乗りはどんな策が張り巡らされているかもわからない敵陣に最初に入って道を切り開き、仲間を導いてくれます。これに対して一番首は、自分の手柄を求めて行動しています。このため、より仲間のためになる一番乗りを上の功績としたのです。
上司はついつい成績が優秀な部下ばかり褒めてしまいがち。
しかし成績に反映されなくても、仲間のために率先して動いてくれる部下こそが本当に組織のためになるのです。その頑張りをきちんと認めることで、やる気を引き出せるでしょう。
蒲生氏郷「報酬と評価があってこそ部下は意欲を出す」
「知行と情は車の両輪、鳥の両翼なり」
ポスト織田信長ともいわれた名将・蒲生氏郷の名言です。残念ながら若くして亡くなったため天下に名乗りを上げることはありませんでしたが、優れた統率力で家臣の信頼を集めました。この名言にもそんな氏郷の人材活用に対する哲学がよく現れています。曰く、「報酬となる土地と評価となる気配りは、車の両輪や鳥の両翼のようにどちらが欠けてもいけない」というもの。氏郷の教えをまとめた『氏郷教訓状』に登場する言葉です。
低賃金問題に揺れる現代日本でこそ、すべての企業に自覚してほしい名言ですね。上司とはいえ給与の決定権がない方も多いでしょうが、部下が企業から適切な賃金が与えられていないと感じたら、上司もともに交渉する姿勢を見せることで信頼を得られるでしょう。
その一方で、「給与は払っているのだから」と冷淡だったり雑だったりする態度を取るのも考えものです。上司が冷たい職場にいると部下は居心地が悪くなり、やる気も失ってしまいます。部下のモチベーションを上げるなら、きちんとした報酬と気配りが最低限必要になると心得ましょう。
立花道雪「無能な部下がいるなら上司が悪い」
「常に士に弱き者は無きものなり」
豊後(現在の大分県)に勢力を誇った戦国大名・大友宗麟の重臣である立花道雪の名言です。「いつでも武士に弱い者などいない」という意味で、戦国武将のエピソードを集めた江戸時代の書物『常山紀談』に登場します。
弱い武士などいないとしても、実際には武功を立てられない人もいますよね。それなのになぜ、道雪はこのような名言を口にしたのでしょうか。
それは、弱いとされる武士は実際のところ、能力を発揮できていないだけと考えたからです。そして能力を発揮できない原因は、部下をきちんと育てられず使いこなしてもいない上司にあるとしています。
成績の悪い部下がいたら、本人を責めずに「自分の指導や指示がよくないのではないか?」と自問してみましょう。部下にやる気を出してもらうには、ともに原因を探って問題解決を目ざす態度が大切です。
道雪は武功を立てられなかった部下に対し、「お前の実力は私が知っているから、武功を立てようと無理をして死んではならない」とフォローしたといいます。ここまで寄り添ってくれる上司なら、部下もずっとついていこうと思ってくれるでしょう。
部下の能力や意欲を引き出すのも上司の仕事
大規模な家臣団や軍勢の統率能力を求められた戦国リーダーたちの名言は、部下を率いるビジネスパーソンの心にも強く響いたのではないでしょうか。400年以上前の人物の人材活用術が現代にも通じる普遍性をもっていることは驚きですが、組織をつくるのは今も昔も同じ人間であることを考えれば、当然なのかもしれません。
戦国リーダーの言葉たちの根底には、「どんな部下も重要な人材になる」という信頼が息づいています。だからこそ能力や意欲を引き出すのはリーダーの務めと考え、評価されにくいタイプの部下も大切にしたのでしょう。
どうすれば部下がやる気を出してくれるのか……と悩んだときは、そんな部下への信頼をもって、今回ご紹介した名言を実践してみてください。上司が先に信頼を示すことで、部下もその信頼に応えようとしてくれますよ。