世界的にCPUが足りない?米Intel社が困る3つの理由

  • 2019/02/20
  • ビジネス
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  • 沖倉 毅
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私たちの生活には、スマホやパソコンが欠かせない。
その頭脳となるのがCPU(中央演算処理装置)なのだが、パソコンのCPUの先端を行く米インテル社のCoreシリーズの生産が追い付かないのだ。

一昨年には、米AMD社のCPU『Ryzen』に初めて市場シェアで追いつかれた米インテル社Coreシリーズ。
CPU=インテルと考えている人も居ると思うが、世界的に供給不測になる理由はどこにあるのか。

 

CPUはパソコンの頭脳

CPUはパソコンの頭脳
米インテル社のCPUの供給不測が露見したのは、台湾でパソコンメーカーに部品を供給する、コンパル・エレクトロニクスが発表したCPUの供給見通しと、同じく台湾にある世界最大のファウンドリー(半導体委託生産会社)のTSMC・CEOが発表した事だ。

コンパル・エレクトロニクスは、’19年秋まではCPUの品薄が続くとみている。
TSMCは、iphone8/X用の半導体を製造する会社だが、CEOのモリス・チャンが、インテル社が次世代CPUの発表を延々と先延ばしにしている事を指摘。

インテル社は、これらの会社の発表を受け、暫定CEOのロバート・スワンが供給不足に対する対応を発表する羽目になった。

CPUはパソコンで言えば頭脳にあたる。
HDDやメモリ、キーボードやデーターを受け取り、機器を制御する役割を果たしている。

CPUは処理速度を決める『クロック周波数』が市場価格を決めると言われており、長年インテル社は、処理速度や性能面では優位を誇っていた。

現在のPCのCPUは、インテル社のCoreシリーズ、AMD社のRyzenシリーズに市場が二分されている。
インテル社CPUの供給不足はどこから来ているのか。

 

インテル社3つの誤算

インテル社の最新鋭パソコン用CPUは、Corei9だが、供給不足と言われているのは、Corei9だ。
最新鋭CPUが供給不足になると懸念される理由には、以下の理由が考えられる。

1:サーバーとパソコンに同じ速さのCPUを使う様になった
2:業務用PCの一斉買い替え、スマホへのCPU搭載
3:ムーアの法則が崩れる恐れ

1はインテル社のCPUの製造プロセスに問題がある。
元々インテル社は、パソコン向け『Core』と、サーバ向け『Xeon』の製造プロセスを別々にしている。

知人のSSE何人かに話を聞いた所、昔はパソコン用に最新鋭のCPUを搭載し、サーバ用は旧世代としていたという。
ご存じのとおり、インテル社は、Coreシリーズの前のパソコンCPUは、Pentiumと廉価版のCeleronを製造していた。
サーバはさらに旧世代のCPUを搭載していた事になる。

いつごろからか知らないが、現在のインテル社は、サーバーにもパソコンにも同じクオリティのCPUを搭載するようになったからというのが、CPUの供給不足になっているのではという見解もある。

2は、業務用パソコンのウィンドウズ7のサポートが’20年1月で切れる事だ。
本年度中に一斉にハイエンドPCに買い替える会社も多いだろう。
こうした負担だけではなく、今年からインテル社は、iphoneXS/XS Max/XRのCPUをインテルにした事が世界的供給不足を招いているというのだ。

では最後の、ムーアの法則というのは何だろうか。

 

ムーアの法則って何?

専門家が指摘によると、インテル社のCPU供給不足の元凶は『ムーアの法則が限界に来たから』だというのだ。

ムーアの法則というのは、インテル社の創業者の一人・ゴートン・ムーアが論文で発表したもので、『トランジスタの集積率が18か月で2倍になる』という性能向上の法則だ。
CPUは長年それを体現してきた媒体で、インテルはその代表格だった。

大昔は冷蔵庫ぐらいの大きさだった演算機が、こんなに小さくなったのもムーアの法則がなりたっているおかげだ。
しかし近年ではデバイスを小さくする為に、多額のコストと高い製造プロセス、技術が求められ、開発に長い年月がかかる様になり、この法則が成り立たなくなった。

インテルの最新鋭CPU・Corei9は、14ナノメートルプロセスだが、現在開発中の次世代CPUは、10ナノメートルになると言われている。
その発表も三期遅れているのだ。

その為TSMCのモリス・チャンは『インテルでムーアの法則は成り立たない』と言い切った。

現在インテル社は14ナノメートルプロセスのCPU供給不足解消にむけて、工場設備投資を行い、’19年年明けに開かれた家電見本市『CES』では、10ナノメートルプロセスのCPUの量産を宣言。

だが一つ問題がある。
最新鋭のCPUの開発にはお金がかかる。
スマホにしても、これ以上集積化が進み、技術開発が進んだとしても、搭載できる機種は限られるというのだ。
何故かというと、技術開発に要した費用を回収できるかどうかが疑問だというのだ。

将来的に現在開発中の10ナノメートルプロセスよりも集積率の高いCPUが開発されたとしても、パソコンは搭載される機種はハイエンドモデルのみとなり、スマホはアップルとサムソンに限られるという。

CPUは本来、パソコンやスマホを便利にするためのものだったはずだが、私たちの手の届かない所にいくかもしれない。

 

この記事の作者

沖倉 毅
沖倉 毅
ビジネスと国際関連をメインに執筆しています沖倉です。 転職経験と語学力を生かし、語学教師とフリーライターをしています。 趣味は定期的に記録会に出る水泳、3000本以上お蔵入り字幕なしも観た映画、ガラクタも集める時計、万年筆、車、ガーデニング、筋トレです。 どうすれば永遠の男前になれるかをテーマに、取材は匿名を条件に記事執筆に勤しみます。
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