受刑者禁断の地?塀のない刑務所ってどんなところ?

  • 2018/04/20
  • ライフスタイル・娯楽
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  • のりき 夢丸
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初めて聞いたとき衝撃を受けた更生施設が存在した

初めて聞いたとき衝撃を受けた更生施設が存在した

先日受刑者が逃走を図った愛媛県今治市の作業所が、別名「塀のない刑務所」と呼ばれていることで話題になりました。

刑務所なのに塀がない?作業所でありながら民間の敷地?
初めて聞いた自分のような人間にはいくつもの「?」マークが浮かぶこの施設とは、いったいどんなところなのでしょうか。

そしてなぜ、その作業所には、塀がないのでしょうか。

 

そこはシャバであってシャバでない禁断の地

そこはシャバであってシャバでない禁断の地

塀のない刑務所…そこはその7文字が語る姿そのものであり、敷地は刑務所の外にありながら、作業者はすべて受刑者で構成されます。

刑務所といえば周囲に必ずあるはずの冷たい鉄格子や壁は一切なく(今治にはフェンスだけはあった模様)、外観は造船ドックそのもの、出ようと思えばいつでも出られるくらい刑務所の威圧感もまったくないとのこと。

事件があった愛媛県今治市の施設は「造船」を受け持つ民間作業所ですが、他にも全国には官民合わせて数カ所の「塀のない刑務所」が存在します。
こういう施設のことを「開放的施設」と呼ぶそうです。

たとえば北海道の網走刑務所には二見ヶ岡農場(ここは国有地)という施設があり、受刑者は緩やかな監視下におかれた農場で作業をしながら、食料の生産、寒冷地農業の発展という責務も担っています。

この網走刑務所の農場作業所はなんと明治29年に設置されたもので、長らく開放的施設といえばここ一択だったのですが、1960年代に愛媛、広島、千葉と相次いで開設されました。
受刑者の自主的姿勢に任された作業と規律が、一定の更生結果を出していたといえるのでしょうか。

 

やっぱり脱走者は少なからずいた

やっぱり脱走者は少なからずいた

そもそも、塀のない刑務所には「厳しい選抜をくぐり抜けた初犯の模範囚」だけが来るそうで、更生の可能性がより高い受刑者の自立心を養う目的があることは明らかです。

とはいっても、やはりそこは、受刑者であり、人間であり。
今回の松山刑務所大井造船作業場だけでも、過去に20人の脱走者がいて、そのたびに地元住民が不安な毎日を送るハメに。
ほかの開放的施設でも同様の脱走は起きており、一番心配される「逃亡のために罪を重ねる」ケースもわずかながら起きています。

脱走の原因は様々なのでしょうが、よく指摘されるのが「開放的施設ゆえの厳しい運営態度にあるのでは」ということです。
よく勤めていれば刑期が半分で済むこともあるそうですが、そのかわり規律やしきたりが元の刑務所以上に満載で、受刑者は一日の大半で緊張を強いられる生活を「我慢」しながらその日を待つ、というのが実情のようです。

あくまで刑務所だからそれは仕方ない、という声も確かにあります。
しかし真の自主性が「強制」からどれほど養われるのか、更生者側がいつもこの視点に立ち戻る柔軟を持ち続けないと、ただの「前時代的軍隊シゴキ場」で終わってしまう危険もありそうです。

 

わき起こるのか「塀が必要」の声

わき起こるのか「塀が必要」の声

法務省は今回の事件を受けて
▼監視カメラ等の保安設備を充実
▼受刑者の心情把握に努める
などの対策に乗り出すようですが、これはいつものこと。

周辺住民の一番の関心事は「今後も塀が立つことはないのか」この1点に尽きるでしょう。

松山の作業所は、もともと実業家が所有していた自身の造船所を刑務所と協力して作業所にしたのが発祥とされます。
いわば「地元のご協力があったからこそ」成し遂げられた成果であり、この施設が「再犯率が低い」とか「自主性を重んじられる」とかいうことは、あくまで結果論に過ぎません。

なにより逆に地元の方々が、作業所に対して精神的な「高い塀」を築くことになっては元も子もないからです。

昔も今も、受刑者が一日も早く社会復帰したい心に変わりはないでしょう。
しかし現代の受刑者の犯罪傾向や思考回路が「塀のない刑務所」での更生と完全にマッチしているかどうかは、今後も注意深く見守る必要がありそうです。

この記事の作者

のりき 夢丸
のりき 夢丸
馬と日本酒と時代劇をこよなく愛するフリーライター。 モットーは「人の行く裏に道あり花の山」。 最近はドローンに興味津々の毎日。 競馬血統ブログ「ほぼ毎週競馬ナビ」にて執筆中。
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