新幹線が成功しコンコルドが失敗した理由

  • 2018/01/13
  • ライフスタイル・娯楽
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  • 沖倉 毅
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食べ放題で料金の元を取ろうと食べ過ぎた人は居ないだろうか。
『〇〇詰め放題』という食品詰め放題に行く為に、朝早くから一家総出で、車で高速に乗り、詰めるだけ詰め込んだ後、
『これどうするの?』と途方にくれた人はいるかもしれない。

この様な場合、そこまでして躍起になって食べる必要があったのか、莫大な交通費と労力を使って行く必要のある
イベントだったのかと考える人もいれば、行った限りは元を取ろうとガっつく人の二派に分かれるのは何故だろうか。

 

払った代金に固執する事

先程の食べ放題の例を取ると代金を5000円として5000円は戻ってこないのだから、その金額分、人は食べようとして、見境いなくがっついてしまう。
この様に既に支払ってしまい回収不能になったコストを『サンクコスト(sunk cost=埋没費用)』という。
サンクコストには、金銭だけでなく時間や労力も含まれている。

払った代金に固執する事合理的な人であれば、食べ放題に行こうと誘われた時点で『ちょっと待てよ』と考える。
参加しないのであれば、その理由は金額に見合うものがないと事前に判っているからだ。
食べ放題の場所に子連れや、うるさいママ友やおばさんが多くて落ち着いて味わえない、味が好みではない、
時間の都合が悪い、参加メンバーで顔を合わせたくない人がいるなど、条件が重なると参加しないだろう。
仮に参加したとしても、がっつかない。好きなものだけ食べて平然としている。

『サンクコスト』に対して合理的な様で、実は固執しているという矛盾した例もある。
フィットネスクラブの土日に良いレッスンがあって会費がお得な為飛びついた人がいるとする。
だがそのクラブに通うには月会費の2倍の交通費がかかる上、クラブ以外の周辺地域の目的娯楽施設はない。
これは『フィットネスクラブ』の月会費というサンクコスト対し自分は合理的だと思って入会した会員だが、実は
傍目からみればサンクコストに固執し交通費という無駄金に頭が回らない実例である。

世の中には、この様に、自分が何かを選択する前に『いや、待てよ』と客観視できない人が居る、何故か。

 

身内に甘い人に囲まれるとサンクコストに固執する様になる

世の中の人は『周囲に注意してくれる人』が居なかったり『周囲が同じ考え』という身内まみれだと、この様な過ちを
犯すという事が実証されている。

独ケルン大のマチアス・サッター教授らはプロのサッカー試合で審判が何故ホームゲームで不正を起こすのか、
実験を行い明らかにした。
教授らは、ホームの形成により審判がロスタイムの長さを変えている事を指摘。
ホームが勝っていると、さっさと試合を終わらせ、1点差で負けていれば逆転のチャンスを作るべく試合開始時間を
長くしている事が判った。

身内に甘い人に囲まれるとサンクコストに固執する様になる
ホームはファンという名の同志が殆どだ。この様な不正は無言の圧力でスルーされてしまう。
逆もまた真なりで、スウェーデン・ストックホルム大のベル・パターソン教授はフーリガンが原因で無観客試合となった
チームの審判が公平に行われているかどうか調査した。その結果、何の偏りもなかった事が判明しているのだ。

これではないが、同じ金、時間、労力をかけるにしても、周囲がシビアであれば、自分を客観視できる。
だがそうでない場合、金、時間、労力の3点はただのムダ使いとなる。

サンクコストに固執し何も生み出せなかったとみなされるいい例は何だろうか。

 

失敗の原因をつきとめ改善することが自制心を磨くコツ

金、時間、労力をかけ、周囲からシビアにたたかれ続けて成功した例と、周囲の疑問を無視し身内の意見に
耳を傾け失敗した例として、新幹線とコンコルドがある。

英仏が共同開発した超音速旅客機『コンコルド』は、ジャンボジェット就航前から莫大な投資で開発が進められ、
先進国も競って予約する程だった。
しかし実用機が完成した頃にはオイルショックで、ソニックブームも去り、ジャンボジェットが就航し、注文予約も
キャンセルが相次いだ。その原因はコンコルドの無駄だった。

失敗の原因をつきとめ改善することが自制心を磨くコツ
コンコルドは、通常の2倍の長さの滑走路を使い、ガソリンも沢山使うのに、長距離飛べず、100人余りしか運べない。
しかも旅客運賃はスウィートの二倍と、海外旅行が、ようやく人々の手に届く様になった時代からしれてみれば、
時代遅れの乗り物だった。
にも関わらず就航しつづけ赤字は累積し、大事故を起こしたのがきっかけとなり、’00年に運航停止となった。

新幹線の企画が本格化したのは1955年(昭和30年)。四代目国鉄総裁・十河信二が、元国鉄の技術者・島秀雄を
技術長に指名し鉄道の電化をスタートさせた事がきっかけだった。

技術長に指名し鉄道の電化をスタートさせた事がきっかけだった
戦中からあった鉄道電化企画は、日本にとって夢だった。
地盤が悪く山が多い日本は貨物より電車の方が輸送スピードも速く、事故も起こらない。
が、当時は資金面から貨物に固執する人間が多くいて、その為、事故が多発していた。

欧米では大量人数のビジネスマンの輸送は旅客機が主流になりつつあり、新幹線は『第二の戦艦大和になる』
と笑う鉄道評論家も居たという。

だが、蓋をあけてみると、日本初の五輪に間に合った新幹線は、日本の二大都市、東京と大阪を日帰りで結ぶ、
日本で唯一の『踏切のない超特急』として就航。
今や新幹線のない東海道の旅は考えられず、東京や大阪各駅からのメトロや私鉄各線の連絡輸送も
実にスムーズだ。

最近その新幹線が『あと一歩で事故だった』というヒヤリハットの車両故障があった。
これは『身内にあまい』国鉄時代の独特の企業風土がまだ残っているといっても過言ではない。
新幹線が、甘えや、サンクコストに固執する人間を押し切り、シビアに運行した初心を振り返って貰いたいと思う。

何事も、金、時間、労力をかける時はシビアでなくてはいけない。
『これだけ金を払ったのだから元を取る』だの『労力をかけたのだから大丈夫だろう』という考えでは、
よいものは生まれないのだ。

この記事の作者

沖倉 毅
沖倉 毅
ビジネスと国際関連をメインに執筆しています沖倉です。 転職経験と語学力を生かし、語学教師とフリーライターをしています。 趣味は定期的に記録会に出る水泳、3000本以上お蔵入り字幕なしも観た映画、ガラクタも集める時計、万年筆、車、ガーデニング、筋トレです。 どうすれば永遠の男前になれるかをテーマに、取材は匿名を条件に記事執筆に勤しみます。
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