日本酒の飲み方は昔は「燗」か「ひや」が主流だった?!

  • 2018/07/10
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植木屋さんが感激したのは「冷やした酒」だった

植木屋さんが感激したのは「冷やした酒」だった

元は上方、後に江戸でも演じられるようになった落語の噺に「青菜」というものがあります。
夏の暑い日、出入りしているお屋敷で一仕事終えた植木屋さんが、ご隠居に一杯誘われる。アテは鯉の洗い、酒は柳陰(やなぎかげ)、植木屋さんには口にしたことがないものばっかり。いたく感激した植木屋さんは……といったものです。
この噺のポイントは、演者がいかに暑い日と、涼しげな「鯉の洗い」とか「柳陰」を対照的に表現するか? というところ。柳陰も噺では井戸水で冷やされた様子が描写されていますから、暑い日ならではの乙な楽しみだと客席に伝わらなければダメなのです。

しかし現代では耳馴染みのない酒・柳陰、ちょっと調べてみたところ、みりんと焼酎を1:1で割ったものでしかありません。

ん?ただの安酒じゃありませんか。
焼酎ならば、植木屋さんも日常的に口にしていたに違いないのです。
しかし植木屋さんは、えらく感激しながら柳陰を飲んでいましたから、恐らく冷やした酒を飲むという習慣がまだ珍しかった、植木屋さんが感激したのは柳陰というよりも「冷やした酒」というところに違いありません。

 

ポピュラーな日本酒の飲み方は「燗」か「ひや」だった

ポピュラーな日本酒の飲み方は「燗」か「ひや」だった

一方「不動坊」など、冬の噺には燗にした日本酒を楽しむシーンがよく出てきます。
戦国期に来日した宣教師・ルイス・フロイスも「我々は酒を冷やすが、日本では酒を温める」と残していますから、燗で体を温めるというのは一般的だった様子。
まだ質の悪い日本酒ばかりだったでしょうから、温めたほうが香りがたつとか、ある程度アルコールが飛んで飲みやすいという理由もあったでしょう。

しかし、暑い最中も燗酒を飲んでいたのか? というと、疑問が残るもの。
そんな時はもっぱら「ひや」。巨大な一升も入る徳利を手に酒屋まで買いにいったら、そこから手近な茶碗に注いで飲んでいた様子。

特に大酒飲みともなると燗にするなど一手間かける暇があったら、酒を飲んでしまいたいというのは、今も昔も変わらないようで、これも落語の「らくだ」では「ひやでもいいから、もう一杯」というのが下げ(オチ)になっています。

 

要注意!!「ひや」と冷酒は違います

ここで注意したいのは「ひや酒」は、今でいう冷酒ではないこと。
柳陰のところでお話した通り、酒を冷やすというのは江戸時代では自宅専用の井戸を持っているお金持ちだけが楽しめたもの。共同で井戸を使っていた一般庶民にとって、酒を冷やすという行為は一般的ではありませんでした。

今日盛んに飲まれている「冷酒」が楽しまれるようになったのは、冷やしても日本酒の風味が楽しめる「吟醸」とか「大吟醸」と呼ばれる酒の人気が高まってから。
加えて、カンタンに誰もが酒を冷やせるようになってからですから、昭和も終わりに近づいたころ。日本酒の長い歴史からみれば、ごく最近のことなのです。

これを知らずに、冷酒=ひや酒と思ってオーダーをすると、常温の日本酒を出されてびっくりすることになる。
冷やすことで風味が飛んでしまうことを嫌うなら「ひや酒」とオーダーするのではなく「常温で」と頼んだほうがよいかもしれません。まあ普通の料理屋ならば、必ず確認されるとは思いますが。

 

新しい日本酒の飲み方「燗ロック」

新しい日本酒の飲み方「燗ロック」

燗、ひや、冷酒……最近では、他にもさまざまな方法で日本酒が楽しまれるようになりました。

たとえば、数年間の熟成を経てから出荷される「古酒」で推奨されることがあるのがオン・ザ・ロック。味わいが芳醇すぎると感じられるケースでは、ハイボール風にソーダで割ったりするのも楽しいものです。

また、犬助が最近知ったのが「燗ロック」という飲み方。
氷が入ったグラスに、燗にした日本酒を注ぐというものですが、これならば燗にした日本酒独特の強い香りが和らぐ上にアルコール度数も下がって、非常に飲みやすい。
特に安価な日本酒と相性がよいと思ったものです。

まあ、日本酒がすすむうちに酒ならばなんでもいい、面倒だから「ひや」でいいや!! となってしまうのは私・アントニオ犬助の悪いクセ。
「ひやでもいいから、もう一杯」酒飲みのクセは昔から変わらないようで……。

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アントニオ犬助
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みんなに嫌われるジジイを目指して、日々精進中!!
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