中国の電子書籍会社・閲文集団が今凄い

  • 2018/02/04
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  • 沖倉 毅
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中国の電子書籍市場が、日本の比ではないぐらい成長しているのを、ご存じだろうか。

’10年頃から、インターネットプロバイダや大手検索サイトが、後ろ盾となり、サービスが始まった中国国内の電子書籍。
’13年の業界の売上高は、15億元(257億円)だったが、’16年には、45.7億元(785億円)と3倍に成長。

東京五輪が開催される’20年には売上が134億元(1302億円)に膨らむと予想されおり、中国国内では期待の的だ。
そんな電子書籍会社の中で、一人勝ちを続けているのが『閲文集団』である。

 

閲文集団とは

中国最大手の電子書籍サービス『閲文集団』は、本社が上海にあり、従業員数は約1100人。
昨年11月に香港A株式市場に新規株式公開(IPO)した会社だ。

IPOの応募倍率が620倍になった直後、大暴落するという、大惨事を引き起こしたが、年始に株価をもちなおし、
現在の株価は、80HK前後に安定している。

30社以上あると言われる、中国の電子書籍市場で同社のシェアは43%でトップ。
2位は掌閲(15%)、3位は中文在線(6%)なので、市場に占める割合は圧倒的だ。

検索大手『百度』や、『アリババ』も電子書籍を手掛けるが、2社の傘下の電子書籍の市場シェアは、それぞれ1%。
何故一社に人気が集中するかが判る。

閲文集団とは

『閲文集団』は、今年には中国国内のユーサー数が10億を超えると予想される国内最大のプロバイダ、テンセントの傘下にある。

テンセントが『閲文集団』の株を半分以上握る事もあり、『閲文集団』は、テンセントのありとあらゆるネットコンテンツやSNSと連携している。

、『閲文集団』は、テンセントのありとあらゆるネットコンテンツやSNSと連携

テンセントの運営するSNS『微信(ウィーチャット)』では『閲文集団』へ作家へのフィードバックを送る事が出来るだけでなく、追っかけのファンは、SNSを通じて作家に拠金する事も出来るのだ。
読者の声を反映し、売れる作家程、儲かるシステムになっている『閲文集団』の業績は右肩上がり。

’16年には26億元(447億円)だったのが、’17年には40億元(691億円)となり、今年の売り上げは’16年の二倍以上に達すると予想されている。

『閲文集団』の後ろ盾が強力である事が判ったが、同社が他の電子書籍会社と一線を隔す理由は他になにがあるのだろうか。

 

ここでしか読めないコンテンツがある

『閲文集団』は、オリジナルのオンライン小説だけで、920万作あるのが魅力だ。
他サイトが著作権を持つ電子書籍や、印刷物を起こしたものも『閲文集団』で読めるが、これらを総計しても41万作なのだから、オリジナルが圧倒的に多いのが判るだろう。

中国の電子書籍ユーザーの7~8割が『90後(1990年代生まれ)』で、彼、彼女らは、パクりではなく、本物、オリジナルにこだわる。
他社で読めるものでなく、この会社だけで読めるからという理由で『閲文集団』を選ぶのだ。
しかもコンテンツ数は多い。

その甲斐もあり、’16年の月間アクティブユーザーは、中国国内だけで1億7500万人、半年後に、2000万人増えている。
電子書籍が、最初の数ページだけ無料で読めて、後は課金制になっているのは日本と同じだが、有料ユーザーは、
’17年6月には1150万人となり、同社ユーザーの6%に上り、今年中には一割を超えそうだ。

背景には、映画やテレビドラマがあるといえる。
日本でも映画やテレビドラマの原作は売れている小説からという事は往々にしてあるが、
それがブロックバスターになったり、視聴率ナンバー1に繋がるかといえばそうではない。

ここでしか読めないコンテンツがある

中国では、’16年の映画興行収入上位20位のうち、13作品は同社著作権を持つ作品で、
’17年のTV視聴率ランキング年間ベスト20のうち15作品は同社のものとなっている。
それだけでなく、ダウンロード動画、ゲームにまで、同社の原作作品が食い込んでいるのだ。

知的財産を保護して貰えるだけでなく、儲かる事が判ると、作家を本腰を入れるのか、同社と独占契約を結んでいる『お抱え作家』は41人も居るという。

日本からしてみれば、著作権ビジネスだけでも、出版社はかなり儲かるが、『閲文集団』の中では、著作権ビジネスは実は8%しか占めていないというのだから驚きだ。

 

販売だけで儲かるシステム

『閲文集団』のビジネスの8割を占めるのが作品の販売だ。
一か月あたり10~18元(171円~309円)で特定ジャンルの作品は読み放題で、他のジャンルも2割引で読めるというのは、日本に比べて随分お得な料金設定である。

中国語を読めるのであれば、勉強がてら読んでみるととても面白い。
この様なビジネスモデルが発達する事になったのは、中国国内の所得の向上と、
消費の拡大が背景にあることだろう。

『閲文集団』は、この流れに乗り会社を大きくし、’14年に米ゴールドマンサックスが出資していた電子書籍会社『クラウダリー』を買収し、その名を中国語圏以外にも知らしめた。

これら中国語圏での電子書籍の発展で、気になる事といえば、違法コピーだ。
’16年の知的財産侵害の被害総額は、114億元とされ、これは正規品市場の2.5倍となる。
恥ずかしい話ながら中国のヤジアップ世代は、未だに違法コピーがお好きな為、この様な結果を招くのだ。

中国国内での、電子書籍事業の発展は目覚ましい

中国国内での、電子書籍事業の発展は目覚ましい。
その一方でこの事業が一過性にならない事を願うのみだ。

『閲文集団』にしても、会社の業績の8割を支えるのが本の購買というのは、いささか危険だと思う。
知的財産の保有や、コンテンツ固めで、会社の5割以上の損益が出るのがベストだろう。

この記事の作者

沖倉 毅
沖倉 毅
ビジネスと国際関連をメインに執筆しています沖倉です。 転職経験と語学力を生かし、語学教師とフリーライターをしています。 趣味は定期的に記録会に出る水泳、3000本以上お蔵入り字幕なしも観た映画、ガラクタも集める時計、万年筆、車、ガーデニング、筋トレです。 どうすれば永遠の男前になれるかをテーマに、取材は匿名を条件に記事執筆に勤しみます。
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