北米では既に始まっている?森林を投資対象にした国内初の森林信託、成功なるか?
- 2019/03/08
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相続や地域の過疎化を機に管理されず荒廃する森林をなくす為、銀行と村がタッグを組んで森林を管理する信託商品を作った。
国内金融業で初となる試みだが、北米をはじめとした諸外国では既に、投資の対象として林業が認められているという。
日本での試みは成功するのだろうか。
山主の負担を減らし、管理会社と銀行に委託する信託
日本で森林信託を行うのは、三井住友信託銀行と、岡山県西粟倉村だ。
同村は、兵庫と鳥取の県境に位置し、面積の9割が森林を占める。
だが森林所有者の転居、高齢化、過疎化が進み『林業で支えられている村、町』が抱える独特の難題に、ぶち当たっていた。
同村は、’08年に『百年の森林(もり)構想』を発足し、この10年でスギやヒノキ丸太の産出量を10倍にし、雇用者を増やす試みをしていた所だった。
そこに救いの手を差し伸べたのが信託銀行だ。
森林所有者(山主)のメリットは受益権を手放さなくて済む事。
所有権だけ、森林管理会社に運用を委託し、管理会社から木材の出荷やキノコの発売などで得た利益の一部を配当金として山主は受け取る事が出来る。
もしも現在の山主が死亡した場合でも、所有権を持っていた場合は固定資産税や森林保険料を払わなくてはいけないが受益権だけ持っていれば、手続き的には楽だ。
所有権が移れば固定資産税や森林保険料などは山主が負担しないで済む。
代替わりで相続する場合も所有権より受益権の方が手続きが簡単だから山主も助かる。
信託期間は10年以上を予定しているのは、短期間だと森林そのものの価値が上がらないという事も考えられる。
森林の間伐や作業道整備にかかる費用の一部は村が補助をするというのだが、ここまでして成功しなければ、どうなるのかと考えてしまうきらいもある。
が、この信託商品で成功すれば、同行は全国展開する予定だそうだ。
では、この様な信託商品、海外にはないのだろうか。
既に森林信託を運用している北米
日本は、森林を投資信託に回すという面では世界に遅れを取っている。
米国では既に機関投資家が森林に投資を行っており、TIMO(Timberland Investment Management Organization)やT-REIT(Timberland Real Estate Investment Trust:林業不動産投資信託)といった森林信託商品に特化した専門マネージャーに、年金や退職金を運用委託する事が一般的だ。
スウェーデンなど北欧では針葉樹の森林維持の為に、IT技術を駆使しドローンで測量する事もやっている。
そのため、今回の三井住友信託の商品も、測量に不可欠な技術を確保すべく、加藤正人信州大教授らが立ち上げた精密林業計測(長野県南箕輪村)に出資を決めている。
米国は日本に比べ国土が広く、投資対象森林は北米に集中しており、樹木は、広葉樹と針葉樹に分別され、信託の運用形態により、自然森林と植林を選べるようになっている。
投資商品と名前がつく以上、対象である森林や土地のクオリティや生産効率をあげなくてはいけないのは当たり前だ。
植栽本数を減らし、早生樹種を採用したり、短期伐採種を植林したり、小径木化の工夫もしなくてはいけない。
育てるのに年数と手間暇のかかる大木を育てていては投資の対象にならないのだ。
投資信託という面で森を見ると、森を育て、そこで育った木のクオリティを上げ、国内外の市場に回す数が多くなればなるほど、林地の資産価値が上がるので配当金が増える仕組みとなる。
だが諸外国の森林信託と日本の森林信託では、大きな問題点と違いがある、それはどこなのか。
信託への出資だけでなく地域の補助金頼りも
日本の林業のコストの大半は、植林とその後の下刈りや間伐などの育林が占める。ここをいかに効率よく削るかという事にかかっている。
荒廃した林のしたに不法投棄されるゴミの問題も、信託商品の対象となる森林のクオリティを下げてしまう事になりかねない。
こうした悪条件をいかにクリアし、価値ある商品として市場に売り出すかが、一度廃れた国内林業の復活化にかかっているのではないかと思う。
また日本の機関投資家は常に、環境系の投資先を探している点にも注目したい。
環境系企業への投資は世論の要請もあり、恒久的利益が見込めたら、投資対象に加えたいと思っている。
恒久的利益が認められる上、社会的イメージアップに繋がればいう事なしだ。
三井住友信託の、森林信託事業は、’19年3月から始まる予定だが、まず一つの地域で成功を収める事が大事だろう。