有給休暇の取得が義務化、職場はどう変わるべき?
- 2018/11/01
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働き方改革関連法が可決、有給休暇の取得が義務に
6月29日に参議院本会議で働き方改革関連法が可決し、正式に施行が決まりました。これまでにも裁量労働制の拡大や残業時間の上限規制などが注目を集めてきましたが、実際に運用されるとなると気になる方が多いのは、有給休暇の取得義務化ではないでしょうか。
有給休暇はもともと労働基準法で定められており、今回の取得義務化は第39条の法改正として追加されています。その内容は「年10日以上の有給休暇の権利を与えた労働者に対しては、1年以内に5日間を取得させなければいけない」、「ただし労働者が自ら有給休暇を取得した場合や、年次有給休暇の計画的付与制度によって有給休暇を取得させた場合はその日数分の義務を免れる」というもの。「年次有給休暇の計画的付与制度」とは、労働者を雇っている使用者側が、労働者と労使協定を結んで休暇取得日を指定できる制度です。
職員に有給休暇を取らせない職場は罰金刑
有給休暇は勤続年数や出勤日数によって変化しますが、正社員やフルタイムの契約社員は入社後6か月で年10日の有給休暇が発生するので、ほとんどの職員が対象になる職場も少なくないでしょう。
これまでは有給休暇の取得は労働者に委ねられてきたので、まったく取らない人がいても法的に問題ありませんでした。しかしこれからは、年5日の有給休暇を取得していない労働者がいると職場が労働基準法違反として罰せられ、30万円以下の罰金が科せられます。
若者なら単純に「有休が取れる」と喜ぶ人が多いでしょうが、部下や職場をまとめる立場のオヤジとしては、「遠慮がちな人にどう取らせようか」とか「職場が回るだろうか」など悩ましい問題もありますよね。
有給休暇の取得義務化は2019年4月から適用されます。もう半年もない中で、職場側はどのような対応をしておく必要があるでしょうか。
有給休暇が取りにくい雰囲気を改めよう
日本人は休むことを「怠けている」とか「だらけている」とイメージして、「悪いこと」と考えがち。このため有給休暇の取得を遠慮する人も多く、現状では結局1日も取らないケースが多くあります。実際のところ日本人の有給休暇取得率は50%ほどで、世界的に見ると最低クラス。これに対して、バカンスなどの長期休暇が定着しているドイツやフランスは100%に達しています。
そうなると日本人の労働時間は世界水準より長いことになりますが、日本の労働生産性は主要7か国のうち最低です。もちろんドイツやフランスよりも低いですから、「有給休暇を取る」=「仕事の成果が下がる」とはいえません。むしろ人間も生き物である以上、休まず働けば疲労によって労働生産性が落ちると考えるほうが自然でしょう。
つまりきちんと休んで仕事に臨むほうが、労働生産性が向上して職場のプラスとなるので、休むことは「良いこと」といえます。まずはこのような考え方を根づかせて、休みが取りやすい雰囲気の職場をつくりましょう。
誰かが休むことを前提とした組織再編を
労働者が有給休暇の取得をためらう理由は、休むことへの後ろめたさだけではありません。周りに迷惑がかかることを心配する人も多いのです。人件費をギリギリまで削減している職場が多い近年では、ひとり休んだだけで業務が回らなくなることも珍しくないでしょう。
しかしこのような組織編成は不健全といわざるを得ません。労働者が休みたいときに休めずワークライフバランスが崩れてしまうと、心身を病んで働けなくなり結局は職場のマイナスになります。有給休暇の義務化をいい機会ととらえて、誰かが休んでもきちんと業務が回せる職場環境を再検討するとよいでしょう。
とはいえ、現実的には人手を増やしたり新しい仕事を覚えてもらう教育をしたりするのが難しい職場もありますよね。この場合は冒頭に登場した「年次有給休暇の計画的付与制度」を使うことも考えてください。計画的付与制度は職場全体や部署ごと、個人ごとに有給休暇取得日を指定できるので、繁忙期を避けるなどの対策が取れます。
そして上司のオヤジが率先して有給休暇を取りましょう。ボスが休めば、部下たちも安心して休めますよ。