JR西昼特きっぷ廃止・阪急お前もか?

  • 2018/09/13
  • ビジネス
  • 1800view
  • 沖倉 毅
タグ

関東ではどうだか知らないが、関西はバス、電車の回数券から、飲食に使う株主優待券、商品券購入に至るまで、ディスカウントチケットショップの存在は、生活の中に組み込まれている。

現在は訪日観光客でもにぎわう、ディスカウントチケットショップだが、これらの店の目玉商品が、’18年9月末に、また消える事になる。

JRの昼間特割きっぷがなくなるのだ。

ただでさえ料金が私鉄より高いJR。
昼特を使う事で、助かった人もいたはずである。

そしてまさかの、あの私鉄も、割引きっぷ廃止に乗り出した。

 

JR昼特きっぷって?

JR西日本が発行する『昼間特割きっぷ(昼特)』は、平日午前10時~午後5時と、土・休日、年末年始終日使える、6枚1組の回数券きっぷの事。

JR昼特きっぷって?

なりたちは、運賃値上げが続いた旧国鉄時代の’83年。
阪急や阪神など大手私鉄に対抗する為に生まれた苦肉の策だった。

京阪神を結ぶ57区間で使え、有効期限は三か月。

以前昼特は、12枚つづりで、一枚あたり普通運賃に比べ40~240円安く設定されていたが、’15年10月より枚数と料金が現在のものに改定され、6枚綴りになり割引率が変更となった。

JR昼特きっぷって?

大阪~京都までなら、普通は560円だが、昼特を使うと350円になる。
並走する私鉄なら、阪急京都線・河原町~梅田までが370円、京阪本線・四条~淀屋橋が410円と、私鉄正規運賃より安くなっている。

有効期限がある為、金券ショップでも目玉商品の一つになっていて、1~2枚だけ購入したい人は金券ショップでバラ売りしてもらう事が多い。
その方が経済的だからだ。

私自身も、昼特を金券ショップで買う。
どうしてもJRの最寄り駅の施設に行かなくてはいけない時に、昼特ほど便利なものはないからだ。

だがJR西日本はJR全社のルールに従い、既存の普通回数券(11枚つづりで10回料金)は残し、昼特を廃止する方針に出た。
それはなぜなのか。

 

交通系ICカード普及を狙うJR

JR西は、昼特の販売修了で交通系ICカード『ICOCA(イコカ)』の普及を狙う方針だ。
そんなバカなと思う。

割引と名の付くものが大好きな関西で、カードというものが定着するのかと。
JR西は、名前こそJRになったものの、体質的に日の丸国鉄が何十年たっても抜けないのか、13回以上乗っていただけるならイコカの便利さが判ると強調していた。

冗談じゃない。
自分の住んでいるエリアにJRと阪急もしくは阪神が通っていたとすれば、JRが選ばれなくなる率が高くなるだろう。
今まで昼特があったからJRに月に3回ぐらい利用していたという主婦層や、団塊世代がJRを利用しなくなる率は高くなる。

交通系ICカード普及を狙うJR

’03年に登場したイコカはJR西での利用率は7割弱。
JR東の『SUICA』の利用率9割に水をあげられた形になっている。
JR西は、昼特の存在がイコカの普及を阻んでいると読んでいるのだが、果たしてそうだろうか。

交通系ICカード普及を狙うJR

私はそうではなく、西日本は東日本に比べ私鉄の力が強いからだと思う。

先日の、西日本地震、集中豪雨、台風21号と、関西圏を未曾有の脅威が襲ったが、JR西は路線が長く、つながっているので、計画的運休を取った。

大手私鉄は壊滅的被害を蒙った後でも、即座に復旧した。
これらを目の当たりにした乗客の反応が、どうでるかは言うまでもない。

交通系ICカード普及を狙うJR

昼特のせいで、交通系ICカードが普及しませんでしたので、昼特を廃止にします、と言えば、ますますJRから客足が遠のくかもしれない。

だが、その私鉄でも『たまに利用する客』に打撃を加える出来事が起こった。

 

阪急お前もか

西日本の私鉄の雄といえば阪急電車。
運賃割引率も高く、沿線も整備されていて、事故が起きたとしても対応が早い。

その阪急電鉄が、’18年9月、きっぷ式回数券の発行を廃止する事になったのだ。
阪急電鉄の主要駅を降りると、必ずきっぷ式回数券をバラ売りしてくれるオレンジの自販機がある。
これで皆きっぷを前もって購入して電車に乗るのだ。

阪急の回数券は、以下の3つのカテゴリーに分かれる

1:普通(終日使用可能:11回で10枚分料金(9.1%割引)
2:時差(月~金曜10時~16時、土日祝日終日利用可能:12枚で10枚分、6枚で5枚分(16.7%割引)
3:土日祝(土日祝日、年末年始、お盆、14枚で10枚分 7枚で5枚分 (28.6%割引)

カード方式と、きっぷ方式があり、両方とも発効日から3か月有効だ。
カード方式だと22枚の回数券もある。

阪急お前もか

カード方式では、一回買ってしまうと、余った時の払い戻しが難儀だが、きっぷだと、バラ売りする事が出来る。
その為、阪急では、きっぷ売り場で3~6人ぐらいのおばさんが、時差回数券を購入して分け合っている光景を見る事が出来る。

時差だと、阪急梅田~河原町は普通運賃だと、400円なのだが、一人頭340円になるので、節約といえば節約になる。

阪急お前もか

さすがに回数カードをなくしてしまうと、乗客が激減して経営が成り立たなくなるという事が判っているのか、阪急は、きっぷ式回数券の廃止にだけに、とどめたようだが、それでも、券売機からきっぷを買っていた人からしてみれば、損失だ。

他の地域ではどうか判らないが、関西ではいまだに『節約してでもきっぷ主義』が浸透している。
この考えを『カードにすればお得ですよ』という風にするには、かなりの時間がかかるのではと思う。

この記事の作者

沖倉 毅
沖倉 毅
ビジネスと国際関連をメインに執筆しています沖倉です。 転職経験と語学力を生かし、語学教師とフリーライターをしています。 趣味は定期的に記録会に出る水泳、3000本以上お蔵入り字幕なしも観た映画、ガラクタも集める時計、万年筆、車、ガーデニング、筋トレです。 どうすれば永遠の男前になれるかをテーマに、取材は匿名を条件に記事執筆に勤しみます。
up 沖倉 毅
沖倉 毅

週間アクセスランキング

    ページTOPへ
    ページTOPへ