多発する自動車メーカーの不正問題、その原因は過剰なルールにあった
- 2018/10/22
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拡大した出荷前検査の不正問題
完成車の排ガスや燃費の検査を無資格者がおこなっていたり、検査手順が誤っていたり。
昨年、日産とスバルで発覚した自動車メーカーの不正問題が、今年の夏以降は、マツダやヤマハ発動機、スズキへと拡大しました。
これで不正を行っていなかったのはトヨタとホンダのみですから、由々しき事態と大騒ぎになるはずなのですが、マツダ「CX-5」は相変わらず売れていますし、スズキ「ジムニー」は納車までに半年待ちだとか。不正問題の影響はそれほどでもない様子なのです。
加えて面白いのが、各社ともリコールを届け出ていないこと。検査に問題があったにも関わらず、排ガスと燃費には問題がないと発表している。
大規模なリコールへと発展した日産とスバル、大した問題にはなっていないマツダなど3社、これらにはどの様な違いがあったのでしょうか。
不正の根本は、テスト行程のシビアさにあった
それでは、マツダやヤマハ、スズキの不正について、少し詳しく見ていきましょう。
3社で問題になったのは完成車の抜き取りテストにおいてなのですが、これは、日々製造されている完成品の中から何台かを選び、国土交通省に届け出ているスペックと差がないかを検査するというもの。
これが非常にシビアなテストだというのですが、何がシビアかというと肝心の環境基準のチェックではなく、テストの行程。
事前に定められた通りに加減速をおこない、そのたびに排ガスや燃費をチェックするというものなのですが、例えば「10秒加速した後に減速」というところを、11秒加速させてしまったとしましょう。「シビアなテストの行程とは少々のズレが生じたけれども、排ガスや燃費は問題ないのだから良しとしよう」。
この判断が問題になったというのです。
もちろん環境性能自体には、まったく問題がありませんから、リコールが発生するはずもないのです。
ここで、日産で問題になった点をおさらい
一方で、昨年に発覚した日産の検査での不正問題は、検査資格を持たない人が完成車を検査していたというものでした。結果、121万台がリコール、250億円以上の費用を日産が負担するという事態になったのですが、この不正問題と、今年になって明らかになった3社の問題は大きく異なります。
マツダやヤマハ、スズキの不正検査の原因は行程が細かすぎるところにある。
環境性能をクリアしているかどうかをチェックするためならば、行程に少々のズレが生じたからといって何ら問題がないにも関わらず、「ルールはルールだからしっかり守りましょう!!」と目くじらを立てている感があるのです。
まるで、小学校の時にいた口うるさい学級委員長のよう……そりゃあ間違ってはいないけれどさ、そこまでガチガチだったら逆に発生する問題もあるでしょうに。
こんなところを消費者は、よく理解していますから不正が発覚したにも関わらず、CX-5やジムニーは売れ続けているのですね。
ルール自体が過剰なことで起こる弊害
そして、これらの不正発覚の発端となった日産の出荷前検査の問題にしても、同情できる余地がないわけではありません。というのは無資格者が検査するどころか、出荷前検査自体を義務付けている国自体が実は少なかったりするから。
その証拠に不正が発覚して製造が止まったのは、国内向けの製品のラインのみ。輸出される自動車は変わらず製造を続けていたというではないですか。
だからといって、検査をおこなわずに出荷された海外向けの日産車に、故障などの問題が多発したなどという話は聞いたことはありません。
ひょっとして、出荷前検査自体が意味がない? ならば検査自体を止めてしまったらどうなんだろうと思うのです。
なぜなら検査で発生したコストを最終的に負担するのは当然ながら消費者。日本では割高の日本車を買わされているということになりませんか?
過剰すぎるルールによって、大切なものが見過ごされているのではないか? と心配になります。「不正、即悪」と断罪する前に、ルール自体を少し考え直してみる必要もあるのではないかと思うのですが。