どすべり忖度弁当はそんなにひどいのか食べてみた

どうしちゃった?冬の新作弁当受難

大手コンビニ・ファミマ系列で12月から発売(なくなり次第終了)された「忖度御膳」という名の新作弁当が、大炎上ならぬ「世紀の大すべり」を演じて、店員さんから悲鳴まで上がる騒ぎとなっている。
正式サイトによるとこの弁当、繁盛を見越してか、ホントは「予約承り票にてレジで申し込んで」買うべき限定品らしいが、いまはふつーに店頭にも売っている。
価格は税込み798円。ランチメニューとしては強気の価格設定にも思えるが、はたして突っ込みどころはそこなのか。それとも「忖度」という言葉だけが一人歩きした話題先行商品なのか。

「いじめられている」と聞けば助けてあげたくなるのが人情というもの。「あれば食べてみよう」と出かけた最初のファミマにあったから、温めてよくかんでいただきましたよ。

献立はごくシンプルな日本食

ちまたでは「忖度弁当」などと言われているが、あくまで正式名称は「忖度御膳」。いちおう膳なのであしからず。

さて肝心の献立は

▼さつまいもの素揚げたれ和え
▼野菜のうま煮
▼焼き金目鯛とごぼうのきんぴら
▼しそご飯
▼きのこ味付けご飯
▼のどぐろ塩焼きのほぐし身と白米
▼卵焼きとポテサラ枝豆のせ
▼豚肉炒めとほうれん草のごま和え
▼なますとたくあん

この9品(一部正式メニューとは異なるが、わかりやすく書いたものもある)になる。

ほんとうに、どうということのない定番の和メニューであり、かえって突っ込むことの方が難しいくらいだ。
ただ、そこへ一枚のお品書きが挟まれており、そこにはこの弁当が「忖度御膳」であるゆえんが記されている。
たとえば
「腹黒くはありませんが」(のどぐろ)
「ごますり」(ごま和え)
「想いを香の物に込めて」そん(たくあん)
といったように。
正直これはかなりうっとうしい…。
忖度の上塗りとでもいうか、「わかるひとだけわかれば楽しいでしょ、ウフフ」という余裕はみじんも感じられない。
サブカルチャーに慣れていない、必死さだけが先行する悪い例だ。

肝心の味はといえば、自分はご飯が好きだから、おいしいものにはおいしいと言ってあげたいたちだけど、ほんとうにふつーの弁当の域を出ない。

ごま和えの上にのっかった豚肉炒めはコンビニ献立特有の味付けが興ざめだし、枝豆は拾えないほど小さいし。
そうそう田舎者のせいだろうが、全体的に「野菜の貧弱さに泣きたくなる」。
だから金目ものどぐろも前に出ない。というかほぐし身で何を感じろというのか。
漬物文化満載の田舎目線でもう一つ言えば、なますとたくあんをいっしょにする神経がわからない。忖度御膳をしめる肝心のたくあんくらい、どこか本場のたくあん持ってきてよ。それでこそ「こだわったのはたくわんかよ!」って突っ込めるじゃん。

とはいうものの、定番幕の内弁当としては及第だろう。
なぜこれを秋の行楽シーズンに出さなかったか、なぜもっとウィットに富んだダジャレが出なかったかは、意味不明だけど。

不人気の理由は八方美人すぎるから?

昼飯に798円とか、まずいとかいう声はさておき。

今年の流行語大賞「忖度」ほどにわかに脚光を浴びた難熟語もない。
世の中の使い方がすべてあってるとは思わないけど、要は「他人の気持ちをおしはかること」。
困ったことに今一番現代人に欠けてきた要素であるから、使い道を誤り、こういう中途半端な「はやりもの」が浮かんでは消える。
「あの人にもこの人にもウケてほしい」は忖度ではない。またあの手この手を塗り重ねる手法も忖度とは言いがたい。

もし「忖度」マーケット(市場)なるものがあったとしたら、それはこだわりの一点突破主義。
「(そん)たくあん」に究極にまでこだわった「たくあんめし」の方が、笑いは取りやすい。その上で「今晩、お酒を召し上がりすぎた方へお茶を注いで茶漬けにどうぞ」とか、そういうコンセプト、物語性の方がよっぽど忖度だと思うのだが。

けっこういいもの使ってるだろうに、惜しいなあ。
ごちそうさまでした。

この記事の作者

のりき 夢丸