スウェーデンお前もか!EU各国に続き北欧でも本格化する、極右の波

人道大国・福祉国家を誇るスウェーデンで、ここ5年来、反移民感情が表面化してきた。
移民の受け入れに積極的だったはずのこの国で、怒りの矛先が移民、難民に向かった理由は何だったのか。

 

人口60人に1人が移民という現状

スウェーデンは100年に渡り、社会民主労働党という中道左派が第一党を維持していた。
その為、国民は『働いて税金を納めていれば恩恵がある』と安心し、税金を納めていた。

スウェーデンの租税負担率は日本の二倍の52%。

日本ではいかにして税逃れするかという考えが後を絶たないが、スウェーデンの政治政策ではいかにして国民に還元するかが焦点となる。

だが、ここ5年、政治家の街頭演説や、議会で問われるようになっているのは、移民、難民への対応だ。

スウェーデンは’50年代は、ソ連の侵攻から逃れてきたハンガリー難民を受け入れてきた。
’60年代には、欧州各国から労働者を受け入れていた。
これらの人々は既にスウェーデン国民として根付き、働き税金を納めて、2世、3世を国内に送り出している。

国民が眉をひそめるのは、ここ10年代の移民についてだ。
中東やアフリカの紛争地から、難民や移民が押し寄せ、その数は積極的に移民の受け入れをしているドイツを凌ぐ。

人口1千万人に対し、16万3000人という難民の数は、1クラスに1人は難民がいる。

最初か歓迎ムードだった国民の心情は動揺に代わり、今では怒りと反発となっている。
それはなぜなのか。

 

第一党につめよる極右民主

スウェーデン国内で支持を伸ばしているのは、極右政党の『スウェーデン民主党』だ。
凶悪犯罪と移民問題を関連付けて、移民難民流入の凍結を訴えるのが政治ポリシーだ。

主な支持層は農村部や工業地帯の労働者の男性と、教育福祉に熱心な女性たち。

『学校の先生は、移民の子供の指導にかかりっきりで、孫の通っている学校の学力レベルが落ちてしまった。病院に行けば外国人が占拠していて、地元のお年寄りの診療は後回しにされて、何時間も待たされる。こんな不公平な話はない。』

『働いておさめた税金は、私たちの福祉の為に使われるべきだ。』

スウェーデン民主党は、’88年、ネオナチの若者が立ち上げた。
当時国内ではネオナチの若者による暴動が治まらず、近年もインターポールが出動する暴動が起こっていた。

この様な経緯から、党たちあげ当時は有権者に見向きもされなかったが、移民問題が表面化した時から、民主党は、難民予算を削減し、社会福祉に予算を回すというポリシーに変更。徐々に有権者の支持を集めるようになった。

10年前に初議席を獲得し、4年前の総選挙では349議席中、49議席を獲得、議会第三党になる勢いだ。

党首ジミー・オーケソン(39)は社会統合とは、何世代にもわたりスウェーデンに住む人を優先し、移民や難民はそれに従ってほしいと街頭演説で強調。
支持者からは拍手が沸き起こった。

 

EU国内で広がる難民抑制

スウェーデンだけでなく難民に寛容といわれたEU国内でも、難民受け入れ抑制は始まっている。

ドイツでは『難民を国境で追い返す』というゼーホーファー内相が、メルケル首相と真っ向から対立。
ゼーホーファー内相はEU各国の首相および極右政党重鎮と組み、難民受け入れ抑制に必死だ。

イタリアでは今年6月1日に、極右政権が発足し、移民船が追い返されるという事件が起きた。
オーストリアでは、クルツ首相が昨年12月に極右自由党と組んだ事で、難民受け入れに難色をしめすようになった。

ハンガリーでは、オルバン首相が今年4月の選挙で圧勝し、反移民を選挙キャンペーンに掲げたことは記憶に新しい。

チェコでは食品やメディアを中心に活躍する実業家・バビシュが昨年12月に首相となり『チェコのトランプ』といわれる手腕を発揮している。

6月末にブリュッセルで行われたEU首脳会議は10時間におよび、各国が自主的に国境沿いに新たな移民対策施設を作るという妥協案に落ち着いたが、これはナチスの強制収容所を想像させる有様だ。

オーケンソンは、もしも第一党になれば、英国の様に、EUから離脱することも視野にいれているが、その際に国民投票は行わない事もすでに表明している。
かつて移民に寛容だった欧州、北欧も幻になる日が刻一刻と近づいているのは間違いないだろう。

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